ヒルクライムレースに向けて急激にダイエットするのは、悪影響しかない理由
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体重を落とせばヒルクライムは速くなる!?
ヒルクライムレースで速くなるための王道はダイエットです。
パワーを落とさず、体重を落とせばタイムが向上する可能性が高くなります。
体重の落とし方は色々な方法があります。
数か月かけて落とす方法もあれば、数日で落とす方法もあります。
ヒルクライムレースはタイムを競う競技です。
ダイエットを競う競技ではありません。
体重を落とす事ばかりに集中すると、逆効果になる場合もあります。
ダイエットについてはこちらの記事を参考に
ダイエットに最適な有酸素系ZWIFTワークアウト5選ー1時間オーバー編ー
ケトジェニックダイエット ロードレーサーにとってのデメリット4選 ケトーシスの仕組み・やり方も紹介
ヒルクライムレースで大切なパワーウェイトレシオ
ロードバイクのヒルクライムにおけるタイム短縮の王道はパワーウェイトレシオの向上です。
パワーウェイトレシオとは体重1kgあたりのワット数のことです。
体重70kgでFTP250Wの人は3.57W/kgです。
体重60kgでFTP240Wの人は4.00W/kgです。
体重70kgの方がFTPは高いですが、ヒルクライムは体重60kgの人の方が理論上は速く登れます。
体重60kgの人の方がパワーウェイトレシオが高いからです。
レースは様々な要因が影響します。
「パワーウェイトレシオが高い=レースに勝つ」とは言い切れませんが、有利にレースを走れることは確かです。
パワーのみがレースの勝敗を分ける要因でないことは、下の記事を参照して下さい。
パワートレーニングの専門用語についてはこちらの記事を参考に。
ロードバイクのパワーウェイトレシオを上げる方法
ロードバイクにおいてパワーウェイトレシオを上げるには二つの方法があります。
FTPを上げるか、体重を落とすかです。
そして、多くの人がFTPを上げる事より体重を減らすことを選びます。
FTPを上げるより体重を落とす方が簡単そう・・・
体重を落とすのは一見簡単そうです。
問題は「パワーを維持したまま」体重を落とす必要があることです。
パワーが落ちてしまっては、パワーウェイトレシオは同じか下がってしまいます。
ヒルクライムレースで勝つためのダイエットの難しい点は、ここです。
食べる量を減らして摂取カロリーを減らせば体重は落ちます。
しかし、それでは「筋肉が食べられる状態」が起こってしまいます。
パワーを維持して体重を落とす 格闘家の場合
長期減量と急速減量
柔道、レスリングといった体重による階級制競技での論文を参考にします。
格闘家が体重を落とす方法は2通り
長期減量と急速減量だよ
階級制スポーツの減量には2通りのパターンがあります。
長期減量と急速減量です。
長期減量は一か月や数週間といった比較的長期間で体重を落とす方法です。
脂質の高い間食を摂らず、消費カロリーを増やす方法なので、健康的に体重を落とすことができます。
食事制限で体重を落とすんだね
一般的なダイエットに似ているよ
急速減量は計量の一週間前から食事制限と水分制限を行い、脱水状態にして体重を落とします。
急速減量は「格闘家の減量」と聞いてイメージするやつだね
格闘技では急速減量が一般的
格闘家の減量と聞いてイメージするのは急速減量の方です。
急速減量は、直前まで普段通りに生活し練習できます。
計量後に栄養と水分を摂ることで、急激に体重増加できます。
長期減量は、試合当日も体重は計量時とあまり変わりません。
急速減量は、試合当日に大幅な体重増加が期待できます。
しかし、健康的とは言い難く、減量中は集中力の低下や筋力の低下が見られます。
それぞれメリット・デメリットがあるんだね
有酸素運動についてはこちらの記事を参考に
長期減量した時のパワーへの影響
男子柔道選手のケース
柔道選手における急速減量が身体組成及び発揮パワーに与える影響
早稲田大学 佐々木智哉
この論文では、階級制スポーツにおける減量は長期間をかけて筋量を維持しながら体脂肪を減少させるのが理想であると述べています。
しかし、実際は短期間での急速減量なので食事制限を行ってしまう選手が多いのが事実です。
長期的な減量は知識と経験が必要
手っ取り早い短期急速減量に頼りがちになるよ
減量による体重の低下は、筋量にも影響を及ぼします。
筋量の減少はパワーに影響します。
脂肪のみを減らし、徐脂肪体重を減らさなかった場合は筋量の低下がありませんでした。
ヒルクライムレース対策として、理想的な減量です。
減量しても徐脂肪体重を変化させないことで、伸展パワーは増加しました。
屈曲トルクと屈曲パワーは減少しましたが、これは食事制限による徐脂肪量の減少が原因ではないかと述べています。
女子柔道選手のケース
女子柔道選手を対象に、6週間かけて栄養指導で減量させました。
栄養指導による減量法が体力や体調に及ぼす影響を検討しました。
食生活を改善することで減量したよ
被験者 | ・大学柔道部の女子5人、男子1人の計6人 ・3人は現役で3人は引退して3から6か月 |
目標 | 6週間で4kgの減量 |
運動量 | ・1回2時間の部活が週に3から4回 ・引退選手は週2回の有酸素運動 |
条件 | ・極端な食事制限はしない ・炭水化物やタンパク質の摂取量を減らさない ・栄養バランスを良くするために食品数を多く摂る |
水分摂取制限やカロリー制限をしない減量方法だね
練習内容から分かるように、エリート選手が対象ではなく、一般部活生を対象にした実験です。。
平均体重は2.9kg減りました。
平均体脂肪率は2.7%減りました。
握力は13%、背筋力は6%、垂直飛びは11.5%、VO2MAXは6.3%、ベンチプレスは31.3%増えた。
体重は減ったのに、パワーは向上しました。
体重や体脂肪率は減ったのに体力は向上したよ
急速減量した時のパワーへの影響
レスリング選手のケース
レスリング選手が急速減量した実験があります。
体重の5%から9%の減量では、筋力は低下しないかむしろ増大するという結果でした。
5%程度の減量でも、VO2MAXは17%減少するなど呼吸循環器系に対しては著しい影響があるとも述べられています。
急速減量は呼吸循環器系に対して大きな影響がある可能性があります。
5%の減量でもVO2MAXに影響する可能性があるよ
持久力系種目の選手は要注意だね!
呼吸循環器系に悪影響があると、結果的に出力パワーは落ちます。
重量挙げ選手のケース
重量挙げ選手が7日間で減量した実験があります。
7日間の急速減量で、試合当日に脱力感や空腹感が増しました。
20日間で減量した場合は、体調も良く、空腹感、倦怠感もありませんでした。
水分摂取制限や脱水は体調に大きな影響を及ぼします。
日常の活動量を増やす減量は体力が向上し、体調も良好です。
論文では、急速減量は健康を害し、体力低下や集中力低下を招くので長期減量が望ましいと結論付けています。
長期的な減量は体力への影響が少ないことが分かるね
高炭水化物で急速減量した時のパワーへの影響
高炭水化物VS通常炭水化物
レスリング選手における減量時のコンディショニングに関する研究 筑波大学 久木留毅
急速減量も様々な方法があります。
大学レスリング選手を対象にして、高炭水化物群と通常炭水化物群に分け一週間で3%の減量させました。
減量後、無酸素域の運動を行いました。
その結果、高炭水化物で急速減量した選手は無酸素域運動に変化はありませんでした。
通常炭水化物で急速減量した選手は無酸素域運動が低下しました。
短期的急速減量では高炭水化物群の方が無酸素域での体力低下は少ないよ
急速減量でも、高炭水化物で行うと無酸素域の運動は低下しないことが分かります。
通常の急速減量は、無酸素域、有酸素域ともに低下します。
長期減量ではどちらも影響しないことが多いです。
長期減量の場合は有酸素域も無酸素域も体力低下しなかったよ
急速減量が筋肉に及ぼす影響
急速減量が代謝や筋肉の横断面積に及ぼす影響です。
全日本レスリング出場選手6名を対象にした実験では、急速減量期には安静時代謝、睡眠時代謝が低下することが分かりました。
短期急速減量をすると安静時代謝や睡眠時代謝に悪影響があるね
急速減量した全日本学生レスリング選手権出場選手12名を調べました。
計量1ヶ月前、一週間前、計量当日、試合当時、計量一週間後に身体組成を計測しました。
通常 | 計量一か月前 | 計量一週間前 | 計量当日 | 計量一週間後 | |
体重 | 74.5kg | ー0.4% | ー7.3% | ー3.3% | ー1.1% |
体脂肪率 | 15.1% | ー5.1% | ー9.3% | ー10.7% | +2.5% |
体幹部筋横断面積 | 59.8 | +0.4% | ー5.9% | ー1.6% | ー0.8% |
大腿部筋横断面積 | 43.8 | +0.4% | ー5.9% | ー1.6% | ー0.8% |
急速減量によって大腿部筋横断面積、体幹部横断面積が小さくなっているよ
減量が終わった後も完全には回復していないね
シーズン中に急速減量を繰り返せば筋肉が小さくなる可能性が高いね
急速減量により、大腿部筋横断面積、体幹部横断面積が小さくなっています、
急速減量による体脂肪量の変化は、部位により異なりました。
急速減量を繰り返すと、シーズンを通して大腿部横断面積が減少する可能性があります。
結論:パワーを落とさずに体重を落とすには!
- 短期的急速減量は筋力の低下につながる
- 大腿部筋横断面積や体幹部筋横断面積は小さくなる
- VO2MAXなどの循環呼吸器系への影響は大きい
- 短期的急速減量は無酸素域、有酸素域での運動能力が低下する
- 短期的急速減量は安静時基礎代謝、睡眠時基礎代謝が低下する
- 短期的急速減量を行うなら、高炭水化物群の方が体力低下は少ない
- 長期的減量は有酸素域、無酸素域ともに変化しない
- 長期減量は筋力の低下はなかった。
- 長期減量は心理的負担も少ない。
減量をするなら長期間で消費カロリーを増やすやり方の方が、体力低下を招かないってことだね。
レースが近いからと言って急いで減量すると逆効果になることが分かったよ