ロードバイクでパワートレーニング CTL・ATL・TSBでパフォーマンス管理
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目次
パワーメーターで好調を維持する!
疲労をコントロールして好調を維持
パワーメーターを導入する大きなメリットの一つが疲労度の管理です。
パワーメーターで毎日のトレーニング量を数値化することで、長期的な体力の向上や疲労の度合いを可視化できます。
パワーメーターが一般化する前は、経験に基づいて体力の向上や疲労の蓄積を推測していました。
パワーメーターのデータを分析すれば、誰でも簡単に体力の向上度と疲労の蓄積具合が分かるようになりました。
パワーメーターは疲労をコントロールし、好調を維持するためのツールでもあります。
パワーメーターは付いているけど、あまり活用できていないよ・・・
パワーメーターの凄いところはデータを蓄積して体力管理や疲労管理ができるところだよ!
パワートレーニングの専門用語についてはこちらの記事を参考に
ポイントはCTL・ATL・TSB
体力の向上度と疲労度を管理する上で知っておくべき単語はCTL・ATL・TSBの3つです。
3つの単語の意味を知ることで、自分のパフォーマンスをコントロールできるようになります。
パワーメーターでパフォーマンス管理をするのに知っておきたいのはCTL・ATL・TSBの3つだよ!
より詳しく知りたい人は「パワー・トレーニング・バイブル」
今回の記事は「パワー・トレーニング・バイブル」を参考にしています。
より詳しく知りたい人だけでなく、全てのサイクリストに読んで欲しい本です。
刺激ー反応モデルとは
パワーメーターを使ったパフォーマンス管理の基になっているのが「刺激ー反応モデル」だよ!
パワーメーターを使った体調管理の基となる理論が「刺激ー反応モデル」です。
刺激ー反応モデルは1975年に考案されました。
トレーニングがパフォーマンスに及ぼす効果をモデル化したものです。
どういう意味!?
トレーニングをすると疲労するため、短期的にはパフォーマンスが低下します。
しかし、長期的にみるとトレーニングで疲労することは、パフォーマンスを向上させます。
トレーニングを数値化することで、トレーニング効果やテーパリングの効果を最大化することができます。
トレーニングすると疲労するので、短期的にパフォーマンスは低下するよ
ハードなトレーニングの次の日は脚が廻らなくなるもんね
トレーニングによる短期的なパフォーマンスの低下は、長期的にみると体力をあげるために必要だね
刺激ー反応モデルはトレーニングとパフォーマンスの関係を数式で表したものです。
「刺激ー反応モデル」の欠点
刺激ー反応モデルを実際のトレーニングで使うには欠点があるよ!
- 生理学的事象と関連付けれられていない
- 「パフォーマンス向上に限界はなく、疲労を抜きながら練習量を増やすほど体力は向上する」という考えに基づいている
- 4日に毎に最大パフォーマンスを計測しなければ正確なデータにならない
- モデルケースにより精度が異なる
トレーニングを続けていると必ず伸び悩む壁があります。
刺激ー反応モデルはトレーニングを続ければ体力は向上し続けるという考えに基づいています。
正確なデータを揃えるために4日に1回最大パフォーマンスを計測する必要もあります。
アマチュア選手が正確な刺激ー反応モデルに基づいてトレーニングするのは現実的ではありません。
刺激ー反応モデルは、練習を続けていると必ず突き当たる「壁」という考えがないよ!
正確なデータを揃えるために4日1回最大パフォーマンスを計測するのも現実的ではないね・・・
刺激ー反応モデルの欠点を補うために考えられたのが「パフォーマンス・マネージャー」だよ!
パフォーマンス・マネージャーとは
パフォーマンス・マネージャーとは
刺激ー反応モデルを実際のトレーニングに応用するために考えられたのがパフォーマンス・マネージャーです。
パフォーマンス・マネージャーは「体力を上げてから疲労を抜けば元気になり、最大の結果を出せる」というコンセプトがあります。
体力を最大限に上げてから疲労を抜いて最大パフォーマンスを発揮するという考え方だよ!
パフォーマンス・マネージャーは3つの構成要素があります。
- 長期トレーニング負荷(CTL)
- 短期トレーニング負荷(ATL)
- トレーニング・ストレス・バランス(TSB)
難しくなってきたよ・・・
順番に見ていこう!
パワートレーニングの管理ツールであるTRAINING PEAKS(トレーニングピークス)では、CTL・ATL・TSBは下のように表示されます。
パフォーマンス・マネージャー | トレーニングピークス |
CTL | FITNESS |
ATL | FATIGUE |
TSB | FORM |
長期トレーニング負荷(CTL)
CTLはトレーニングピークスではFitness(CTL)と呼ばれているよ
CTLは長期的な疲労度を数値化したものです。
42日間のTSSを基準に計算します。
TSSとはトレーニング・ストレス・スコアです。
1回あたりのトレーニングの疲労度を数値化したものです。
TSSについてはこちらの記事を参考に
トレーニング・ストレス・スコア TSSはロードバイクトレーニングの優れた指標だが限界もある!!
指数加重移動平均として算出するので単純に過去42日間のTSS平均ではありません。
単純にTSSの42日間の平均値ではなく、最近の値ほど重要視される計算式だよ
短期トレーニング負荷(ATL)
短期トレーニング負荷(ATL)はトレーニングピークスではFatigueと呼ばれているよ!
短期トレーニング負荷(ATL)は短期的なトレーニング強度です。
最近どれくらい練習しているかを数値化します。
ATLは短期的なTSSを基に計算されます。
ATLに反映されるデータは主に過去2週間です。
短期トレーニング負荷(ATL)は主に過去2週間のデータの影響を受けるよ
短期トレーニング負荷(ATL)は最近のトレーニングによる疲労度を表すよ!
トレーニング・ストレス・バランス(TSB)
トレーニング・ストレス・バランス(TSB)はトレーニングピークスではFormと呼ばれているよ!
トレーニング・ストレス・バランス(TSB)は「調子の良さ」を数値化したものです。
長期トレーニング負荷から短期トレーニング負荷を引いた値がトレーニング・ストレス・バランス(TSB)です。
CTL-ATL=TSB となります。
調子の良さは体力があって疲労が抜けている状態です。
疲労が抜けていても体力がなければ調子が良いとは言えません。
長い間トレーニングをしないと疲労はしていないけど体力がないから調子が良いとは言えなくなるね!
CTL・ATL・TSBの目安
CTL・ATL・TSBのことは分かったけど、どれくらいの数値を目指せば良いの?
TSSの目安
トップアマチュアやプロ選手の目安は100TSS/日~155TSS/日です。
100TSS/日未満だと練習不足です。
TSSの目安は100TSSから150TSSだよ!
毎日150TSSを超える練習を長期間行える選手は、僅かしかいないと言われています。
ツールドフランスの1日平均TSSは200TSSから300TSSでした。
ツールドフランスは短いTTや休息日もあるので平均すると200TSSから300TSSになるよ!
ツールドフランスは3週間なので、毎日150TSSの練習をするのは難しいことが分かります。
3週間毎日150TSSのトレーニングするのは難しい!
CTLの目安
毎日100TSSのトレーニングをしていればCTLは100になります。
CTL100が良いトレーニングを続けている目安になります。
CTL150以上を続けるのは困難です。
オーバートレーニングを防ぐために、CTLを把握することが大切です。
1週間のATL・CTLの上昇量
ATLやCTLは1週間でどれくらい上がれば良いの?
ATLの上昇は1週間で70TSS未満にするべきです。
1週間の間に70TSS以上増えた場合はオーバートレーニングになる可能性があるので注意が必要です。
ATLの急上昇はトレーニング量を急激に増やしていることを表します。
トレーニングの急増に体が付いていけない可能性が高くなります。
ATLは徐々に増やすのが理想です。
ATLが急上昇するということは急激にトレーニング量を増やしているということ!
CTLの1週間の上昇量が3TSSから7TSSだと無理がないペースです。
7TSSより上がる週が4週間以上続くと危険です。
CTLが1週間で3TSSから7TSS増えるくらいを目安にトレーニングしよう!
トレーニング量を増やす期間が長いとCTLが上昇するんだね!
ATLとCTLのバランス
ATLの値がCTLよりも高い場合が長期間続くと注意が必要です。
過去42日間のトレーニング量よりも過去7日間のトレーニング量が上回っている状態です。
ATLがCTLより高い状態が短期的な場合は、集中してトレーニングできていると言えます。
ATLがCTLより高い状態が長期間続くと、オーバートレーニングの可能性が高まります。
最終的には燃え尽きてしまいます。
オーバートレーニングを防ぐためにATLとCTLのバランスに注視しましょう。
オーバートレーニングについてはこちらの記事を参考に
バーンアウト(燃え尽き症候群)を防げ!~いつまでも情熱的にレースするために~
TSBの最適値
レース当日にベストなパフォーマンスを発揮するために、TSBを使うことができます。
レース当日は体力があって疲労が抜けている状態がベスト!
TSBが0の状態は、疲労が抜けているけれども体力がある状態です。
TSBがマイナスでも、上昇途中にあるなら調子が上がっている状態です。
多くの選手はTSBが-5から+15の時がベストです。
トラックレースなど短時間のレースでは、TSBが+の方が有利です。
トラックレースでベストなパフォーマンスを出すには、疲労をしっかり抜くことが大切です。
ロードレースなど持久的なパフォーマンスが必要な場合は、体力レベル(CTL)が重要です。
疲労が抜けているかは、あまり重要視されません。
TSBはー10から+25の間がベストです。
パフォーマンス・チャートの分析
パフォーマンス・チャートを実際に見ていこう
下のチャートはトレーニングピークスから作成したものです。
ピンク色のグラフがATL(疲労)、青色のグラフがCTL(体力)、黄色のグラフがTSB(調子)を表します。
①の期間
①はトレーニングピークスを使ってパワートレーニングを始めた時期です。
データがない状態なので、TSBは100、ATLとCTLは0になっています。
一番最初はデータがないのでTSBは100、ATLとCTLは0になるよ
正確なチャートになるにはCTLが反映される42日後になるんだね
②の期間
②の期間はデータが蓄積し、パフォーマンス・チャートが有効活用できるようになりました。
②の期間は、選手にとって大切なレースがありました。
練習量を落とし、テーパリングしました。
ATL(疲労)が下がったのでCTL(体力)の伸びは横ばいになりましたがTSB(調子)が上がったのが分かります。
レース前に練習量を落とすと疲労(ATL)が下がって体力(CTL)は停滞し、調子(TSB)が上がるよ
③の期間
③の期間は合宿を行ったので練習量が増えています。
3日間の間にTSS300近い練習を3回しました。
疲労(ATL)が急上昇し体力(CTL)も上がっているのが分かります。
調子(TSB)は急激に下がりました。
短期間なら問題ありませんが、長期間このような状態が続くとオーバートレーニングにつながり、体調を崩す可能性が高いです。
TSB(疲労)が下がった状態が長期間続くと危険!
パワーメーターでパフォーマンス調整! まとめ
- 疲労レベルは短期トレーニング負荷(ALT)で表す
- ATLはトレーニングピークスではFatigue(ATL)
- 体力レベルは長期トレーニング負荷(CTL)で表す
- CTLはトレーニングピークスではFitness(CTL)
- 調子レベルはトレーニング・ストレス・バランス(TSB)で表す
- TSBはトレーニングピークスではForm
- 1日のTSSは100TSSから150TSSが目安
- CTLは100が目安
- ATLの値がCTLよりも高い場合が長期間続くと危険
- CTLの1週間の上昇量が3TSSから7TSSだと無理がないペース
- レース当日の最適TSBはトラックレースとロードレースで違う
- トラックレースの最適なTSBは+の方が有利
- ロードレースの最適なTSBはー10から+25の間