ロードバイクの脚の「つり」 防げる!?防げない!?



ロードバイクトレーニングやレース中に脚がつるのはなんとかならないの!?
ロードバイクだけじゃなく、サッカーや陸上の試合中も選手は脚がつるよ!


予防法はないのかな?
2007年世界陸上大阪大会で日本人選手の多くが脚がつって成績が振るわなかったことで大きな話題になったよ!


トップアスリートと最高のコーチ陣が万全の体勢で挑んでも予防できなかったのか・・・
今回は次の論文を参考に検証します。
「運動時に発生する筋痙攣の要因および予防法」 明治学院大学 大野 政人 他
「有痛性筋痙攣の治療」 筑波大学 准教授 石 井 一 弘
「第11回世界陸上競技選手権大会を終えて」 筑波大学体育科学
Contents
「つり」は予防できる? 2007年世界陸上大阪大会での惨劇
長時間のロードバイクトレーニングやレースで脚をつったことのある人は多いのではないでしょうか。
トレーニング中だけでなく、睡眠中もつることがあります。

寝ている時に脚がつることもあるね!
なぜつるのでしょうか。
どうすれば予防できるのでしょうか。
トップアスリートでも脚がつることを防ぐのは難しいです。
2007年世界陸上大阪大会

トップアスリートでさえ脚のつりを予防するのは難しいよ!
トップアスリートの「脚のつり」が大きく注目されたのが2007年夏に大阪で開催された世界陸上でした。
2007年世界陸上は16年ぶりに日本で開催されることで大きく世間の注目を集めました。

TBSが大々的に宣伝したので大きく世間の注目を集めたよ!
男子選手45名、女子選手36名がエントリーしました。
メダル5個獲得を目標に日本のトップアスリートやコーチ陣が一丸となって挑んだ大会の結果は惨憺たるものでした。
メダルは女子マラソンの1個のみ。
多くの選手が脚の攣りにより予選敗退しました。
あの室伏がまさかの6位、末續、醍醐、そして、沢野が次々にけいれんを起こして…。TBSが運営する世界陸上大阪大会で、日本選手の苦戦が続いている。そんな事態に、08年に北京五輪を控えた陸上関係者から、「選手はあまりスター意識に走らないで」と苦言が出た。選手らは、スターの仕事の方が忙しかったのだろうか。
J-CASTニュース

批判的なメディアが多かったんだね
日本選手団の対策
日本勢は万全の対策で大会に挑みました。
大阪は日本で最も暑さの厳しい土地です。

大阪の暑さを見越して様々な対策をしていたよ!
そのため、暑熱馴化のトレーニングを実施しました。
トレーニング時の水分、電解質の摂取を徹底しました。
大会前は清涼な北海道で合宿を行いました。
しかし、200mの末續慎吾選手などメダルを期待された選手が続々と脚の痙攣により予選敗退します。

対策をしていたにも関わらず、脚のつりを防止できなかったんだね
チームの雰囲気は暗くなり、スタッフに動揺が広がりました。
予選敗退の連鎖を食い止めるために対策がなされました。
選手の血液性情を調査し、症状を聞き取りました。
水分と電解質の摂取を徹底しました。

予選敗退の連鎖を食い止めるために血液を分析し、水分と電解質の摂取を徹底したよ
トレーラーステーションを冷房の効いた室内から屋外へ移動しました。
しかし、最も大きな要因は精神的重圧でした。
16年ぶりの日本開催なのでTBSは大々的に大会を宣伝しました。
選手は通常のビジネスホテルに宿泊していたため、一歩でも外に出るとサインや写真撮影に応じる必要がありました。
追っかけも多かったので、部屋に閉じこもりがちになりました。
気分転換のための散歩も難しい状況でした。
水分や電解質の摂取を徹底し、万全のコンディションで挑んでも「脚のつり」は防げませんでした。

選手にはかなりのプレッシャーがかかっていたんだね

なぜ「つる」のか!?
大学生を調査
「脚のつり」である筋痙攣は運動中や睡眠中に発生します。
筋痙攣は突発的・不随意的な有痛性の筋収縮です。
大学生547名を対象に調査したところ、92%が「つり」を経験していました。
一度もつった事のない学生も5%から8%いました。

つったことのない人も結構いるんだね!
下腿後面:62%
足の裏:42%
足の指:31%

つる場所はハムストリングスが多かったよ!
スポーツ選手を調査
スポーツ選手を対象にした調査ではマラソン選手の33%、トライアスロン選手の62%がレース中につった経験がありました。
下腿三頭筋:80%
大腿四頭筋:48%

下腿三頭筋はふくろはぎ
大腿四頭筋は太ももの前側
原因は筋疲労と回答しています。
筋痙攣は筋疲労、脱水、血中の電解質、タウリン、クレアチン、ビタミンの減少、環境温を要因とする説があります。

つりの原因は色々な説があるよ
速筋タイプは筋痙攣の発生する割合が高いと言われています。
速筋タイプは代謝産物の産出量が多く、筋が緊張しやすいためではないかと言われています。

速筋タイプはつりやすい傾向があるんだね
速筋、遅筋についてはこちらの記事を参考に
「疲労説」「脱水説」「気温説」「血中電解質低下説」「ストレス説」
疲労説
筋疲労によって筋痙攣が発生することを実験的に検証した研究はありません。
筋疲労を生じさせても痙攣は発生しませんでした。
筋疲労が筋痙攣の主原因であるとは言えません。

筋疲労が「つり」の原因とは特定できなかったよ
疲労は原因のひとつな気がするけどね

脱水説
マラソンやウルトラマラソン、トライアスロンで筋痙攣が発生した選手としなかった選手の体重減少率や血漿量を調査しました。
血漿量などに違いはありませんでした。
脱水は筋痙攣の要因ではありませんでした。

痙攣した選手としなかった選手で脱水症状に違いはなかったよ
痙攣が発生しやすいテニス選手に日常から水分とナトリウムを多く摂取するようにしました。
すると筋痙攣は発生しなくなりました。

痙攣しやすい選手に水分とナトリウムを日常的に摂らせると効果があったんだね
環境温説
高温環境で電解質を含む水分を摂取させると筋痙攣の発生が遅くなりました。
発汗に伴う脱水が筋痙攣の要因である可能性があります。

気温が高いと汗が多くなるね。
汗による脱水は痙攣の原因になるかも
発汗による脱水のメカニズムは次の通りです。
- 脱水により神経ー筋接合部の間質液が減少する
- 筋力発揮時に神経に加わる圧力が増加する
- 運動神経終末が興奮する
- 筋痙攣が発生する

汗が出ると運動神経が興奮しやすくなって痙攣しやすくなるよ
血中電解質低下説
血中の電解質、タウリン、クレアチン、ビタミンの低下が筋痙攣に関係している可能性は高いです。

血中電解質濃度と痙攣の発生は関係が深いと言われているよ!
マグネシウムの摂取で夜間の筋痙攣を予防することは出来ませんでした。
フットボールの試合中に筋痙攣が発生した選手を調査しました。
筋痙攣は発生した選手は発汗によるナトリウム損失量が多いことが分かりました。

汗でナトリウムが失われた選手は痙攣しやすかったんだね
ナトリウムを含む飲料で筋痙攣の発生を遅延または予防できました。

ナトリウムを含む飲料を飲むことでつりを予防できた実験もあるよ
長距離レースの選手を調査すると筋痙攣の発生した選手と発生しなかった選手で濃度に違いはありませんでした。

長距離選手では痙攣があった選手となかった選手でナトリウム濃度に違いはなかったんだね。
なんだか分からなくなってきたよ~
高温、低温が筋痙攣に影響するかを検証した実験はありません。
マラソンレースで筋痙攣が発生した選手と発生しなかった選手で直腸温に違いはありませんでした。

痙攣と体温にも関係はなかったよ
常温でも筋痙攣は発生します。
環境温が筋痙攣の直接的な要因とは考えにくいです。

気温が痙攣の直接の原因とは言えなかったよ
運動前のストレッチングが筋痙攣の予防になると言われることが多いです。
しかし、これは筋痙攣が発生した時の対処法が拡大解釈されている可能性が高いです。

痙攣した時にストレッチして治すことが予防にもなると思われたのかも
ストレッチで痙攣は予防できないんだね

トレーニングやレース前の静的ストレッチングはデメリットがあります。
トレーニング前のストレッチングについてはこちらの記事を参考に
筋痙攣は長時間の運動で発生することが多いです。
棒高跳びや走り高跳び、200m走など短時間の運動でも発生します。
筋疲労や電解質異常だけでなく、精神的ストレスも大きな要因です。

走り幅跳びなど短時間の運動でも痙攣するよ!
ストレス説
2007年世界陸上で日本選手団は威信をかけて大会に臨みました。
暑い大阪で脚のつりへの対策も万全でした。
選手は水分と電解質を十分に摂取しました。
しかし、つりを避けることはできませんでした。
メディアが大々的に大会を盛り上げたことによる精神なプレッシャーは「つり」に大きく関係しそうです。

万全の対策でも予防できなかったのは大きなプレッシャーが原因なのかも
脚のつりの予防
なぜつるのかが完全に解明されていないので完璧な予防法はありません。
しかし、予防できる可能性のある方法はあります。
タウリン
肝機能障害のある人はつりやすいことで知られています。
肝機能に障害があるのでタウリンの合成能力が低下し欠乏します。
血中のタウリン濃度の低下が筋痙攣を誘発します。
2週間の期間タウリンを2000mg投与すると筋痙攣が予防できます。
タウリンは市販の栄養ドリンク等で比較的手軽に摂取できます。

効果が実証されているのは肝機能障害のある人のみです。
健康な人の筋痙攣を予防できる実証はされていません。
芍薬甘草湯
芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)は漢方薬の一種です。
痛み止めの効果があります。

肝硬変や透析によるつりの予防によく使われます。
芍薬甘草湯は即効性があります。
トレーニングやレース中の脚のつりに対する効果は立証されていません。
マグネシウム
妊娠中はつりやすくなります。
妊婦には副作用のある薬が使えないのでつりの予防のため硫酸マグネシウムを含む便秘薬が処方されます。

つりを予防できる可能性はありますが便秘薬なのでトレーニングやレースには不向きです。
まとめ 「つり」は防げる!?
- 脚のつりはトップアスリートでも防げない
- 「疲労」「脱水」は要因のひとつである可能性はあるが実証されていない
- ナトリウムを含む電解質は大きく関係している
- 精神的なストレスはつりの大きな要因になる
- 完全な予防法はない
- 可能性があるのは「タウリン」「芍薬甘草湯」「マグネシウム」

脚がつる原因は完全に解明されていないので完璧な予防法もないよ!
出場するレース以上の距離で普段から練習していれば脚がつることは少ないね!


