ロードバイクの脱水を防ぐ水分補給の方法を徹底解説
Contents
目次
ロードバイクでなぜ脱水症状になるのか
脱水のメカニズムを知って予防する
ロードバイクで脱水になるメカニズムを理解し、水分補給することが大切です。
体に起こる変化を理解することで、より良い水分補給ができます。
水分補給に電解質が必要なことは、常識になりつつあります。
電解質が必要な理由や補給量、糖質の必要性を理解すると、自分に合った水分補給ができるようになります。
必要な水分補給量や種類は人によって、大きく異なります。
同じ人でも時期やトレーニング量、体調により違いがあります。
本記事は脱水について知ることで、自分に合った水分補給を目指すことが目的です。
暑熱順化についてはこちらの記事を参考に
水分補給はリカバリーに大きな影響を与える
ロードバイクにおける水分補給の大切さは、トレーニング中だけではありません。
トレーニング前後の水分補給は、リカバリーに大きな影響を与えます。
水は身の回りに溢れていますが、優れた栄養素です。
体内では、栄養運搬や反応媒体として大きな働きをします。
水の大きな働きの一つが体温調整機能です。
水は大幅な温度上昇を伴わず、多くの熱を吸収できる特性があります。
この特性は、ロードバイクのペダルを回しても体温が上昇するのを防いでくれます。
トレーニング後の水分補給は、運動で失った水分のアンバランスを修復します。
リカバリーに大きな影響を与えます。
リカバリーについてはこちらの記事を参考に
ロードバイクのリカバリー戦略 回復食のタイミング・量・注意点
人は水で出来ている
体内の水分量が個人差が大きい
日常的にロードバイクトレーニングしている人は体の50%から70%が水です。
体内の水分量は年齢、性別、筋量により大きく異なります。
体内の水分量は個人差がとても大きいよ!
筋量の65%から75%、脂肪量の50%が水です。
成人は一日2.5リットルもの水を飲む必要があります。
水分補給もトレーニング
暑い環境でトレーニングする人は、5リットルから10リットルが必要と言われています。
十分な水分補給にはトレーニングが必要です。
暑い環境でのトレーニングに慣れていない人は、水分補給も不十分な可能性があります。
水分補給もトレーニングの一環として捉える必要があります。
自分に必要な水分量を把握し、補給に慣れる必要があります。
予めどれ位の水分を摂るかを決めておくと、脱水を予防できます。
15分毎に飲むボトルの量を決めておき、サイコンのタイマーを活用することが有効です。
ロードバイクにおける水の役割
移動手段
水は、栄養素や老廃物の移動手段です。
水は電解質を溶解し、体の構造や形を造るものです。
血液は、その大半が水分でできています。
血液は、ナトリウムやカリウムなどの電解質だけでなくエネルギー源である糖質も運搬します。
脱水になると、血液の運搬能力が著しく低下します。
体温維持
水は熱を吸収する性質があります。
水は体温の維持に大きく貢献しています。
水は温まりにくく、冷めにくい性質があるよ!
発汗も体温調整に大きな役割を果たしています。
汗をかくと、体表が濡れます。
皮膚を濡らした汗が蒸発する時に、気化熱として体温を下げます。
正常に汗をかくためにも、水分補給が大切です。
心拍数の維持
体内の水分が少なくなると、血漿量が減ります。
血漿は、血液の液体成分のことです。
血漿が減ると、血の粘性が増し、どろどろになります。
血漿量が減ると粘性がますため、酸素運搬能力が悪化します。
十分な酸素が運搬できないため、心拍数が増加します。
水分の減少が多過ぎると、心拍数の増加だけでは対応できなくなります。
心拍数増加の次に起きるのが、心臓の拍出量の減少です。
脱水になると、最大心拍出量が減少します。
1%の脱水で心拍数は10拍上昇します。
心拍数が増加し、疲労感が増します。
心拍についてはこちらの記事を参考に
【ロードバイク】心拍出量を増やしてVo2maxを上げる3つの要因
脱水で体に起きる9つの変化
脱水による9つの変化
ロードバイク中の脱水が体に及ぼす影響は一つではありません。
複数の要因が影響しあって、パフォーマンスの低下を招きます。
脱水は次の9つの影響があります。
- 血液粘性の増加
- 皮膚表面の熱変換効率の悪化
- 排泄機能の低下
- 活動筋の不活性化
- 心臓ポンプ機能の低下
- 血漿量の減少
- 動脈圧の減少
- 筋肉と皮膚の血流量の減少
- 心拍数の増加
脱水になると、血液成分が減少するので筋肉に十分な酸素を送れなくなります。
心臓は、少ない血液を無理に送ろうとします。
心拍数は上昇するのに拍出量は減少します。
心拍数は高いのに酸素が送れず、疲労感が増します。
内蔵に与える悪影響
脱水は、内蔵にも悪影響があります。
脱水になると、血漿量が減ります。
血漿量が減ると、内蔵血漿量が減ります。
内蔵血漿量が減ると、消化器損傷のリスクが増大します。
有酸素能力の低下
脱水は、有酸素能力にも悪影響があります。
水分損失が2%で、有酸素能力が20%減ったとする実験があります。
別の実験では、自転車競技者が1.8%の脱水になるとVo2max90%強度で維持できる時間が32.8%短くなりました。
脱水になるとロードレースはかなり不利になります。
適正に水分補給している選手に勝てなくなります。
トレーニングの質も保てなくなります。
有酸素トレーニングについてはこちらの記事を参考に
スプリント力への影響は小さい
脱水は、短時間の無酸素運動にはあまり影響しません。
脱水により、スプリント力はあまり低下しません。
判断能力の低下や回復の遅れといった影響はあります。
ロードバイクなど、持久的種目に比べれば影響は小さいものの、予防する必要があります。
スプリントトレーニングについてはこちらの記事を参考に
ロードバイクのスプリント力に直結する「無酸素パワー」への大きな誤解
ロードバイクの水分補給が足りているかを知る方法
脱水判定の必要性
毎回のトレーニングで、自分が脱水状態かどうか判定することが大切です。
トレーニングの度に判定することで、必要な水分補給量が分かるようになります。
暑い時期のトレーニングは、小まめに脱水判定をしましょう。
気温、湿度、時間、体調、トレーニング量など脱水に与える要素は様々です。
同じ条件はありません。
脱水判定を繰り返すことで自分に必要な水分補給量が分かります。
トレーニングの度に脱水状態を判定することで自分の水分状態が分かるようになるよ
水分損失量の判定
脱水しているかどうかを判定する最も簡単で確実な方法は、体重測定です。
トレーニング前後の体重を測定すると、水分損失量が分かります。
脱水は、発汗により起こります。
体重の0.5%の脱水なら悪影響はありません。
しかし、ロードバイクでトレーニングをすると0.5%以上の脱水にすぐになります。
トレーニングすれば0.5%の水分はすぐに失うね
水分損失が水分補給を超えた状態が脱水です。
体重測定による脱水の判定方法
脱水の判定に使う体重計は0.5kg単位以上の精度で測れるものを使います。
汗で濡れた衣類は着ずに測ります。
排尿後に、裸で測るのが理想です。
脱水率は次の式から算出します。
運動前の体重ー運動後の体重=水分損失量(ml)
水分損失量÷運動前の体重×100=脱水率
(例)
体重60kgの人がトレーニング後に58kgになりました。
60kgー58kg=2(ml)
2÷60×100=3.3%(脱水率)
脱水がロードバイクのパフォーマンスに与える悪影響
脱水率が体に与える影響
脱水は、心身共に影響があります。
脱水率 | 体への影響 | 体重60kgの場合 |
2% | のどの渇き | ー1kg |
3% | 強いのどの渇き・食欲不振 | ー1.5kg |
4% | 皮膚の紅潮・イライラ・体温上昇 | ー2.5kg |
5% | 頭痛 | ー3kg |
8%から10% | 体の痙攣 | ー5kgからー6kg |
20%以上 | 無尿・死亡 | ー12kg |
脱水率に最も大きな影響を与えるのは気温です。
暑い環境でロードバイクに乗ると、体の水分蓄積量が激減します。
その結果、脱水になります。
暑い環境で体温調整するために、大きな犠牲を払うことになります。
脱水とロードバイクのパフォーマンス
脱水が軽度でも、ロードバイクのパフォーマンスに影響を与えます。
トレーニングが長時間になり、水分補給が十分に行われないと影響は更に大きくなります。
脱水症状が出ると、ロードバイクのパフォーマンスは著しく低下します。
1.8%の脱水をした場合、VO2MAXの強度を維持できる時間が32.8%短くなった実験もあります。
脱水の影響は、長時間の運動ほど大きくなります。
脱水は心理面での悪影響もあります。
最も大きいのは判断能力の低下です。
ロードレース中に脱水になると、判断能力の低下から落車の危険性が高まります。
ロードレースについてはこちらの記事を参考に
ZWIFT(ズイフト) レースに勝つための5つのパワーアップアイテム 効果的な使い方とミステイク
ロードバイクの脱水を防ぐ方法
理想の水分維持方法とは
運動をしていない一般人の一日の推奨水分補給量は、2リットルから3リットルです。
飲料で1.5リットルから2リットル、食べ物から0.5リットル摂ることが推奨されています。
ロードバイクでトレーニングする場合は更に多くの水分補給が必要です。
体は水を貯める能力があまりありません。
脱水を予防するのは困難です。
トレーニング前に計画的に水分補給しても、脱水を未然に防ぐことはできません。
尿量が増えるだけです。
のどの渇きは水分補給の目安にはなりません。
のどの渇きを感じた時点で行う水分補給は、脱水を防ぐことができません。
のどの渇きを感じる前に水分補給する必要があります。
重要なのは、失われた水分を補給することです。
トレーニング後の体重減少を極力少なくする
トレーニングする前の体重と後の体重を同じにすることは、ほぼ不可能です。
同じ人が同じ内容のトレーニングをしても、体重減少は毎回違います。トレーニング前後の体重減少量を少なくする水分補給が理想です。
トレーニングの度に水分損失を測定することで、必要な補給量が分かります。
小まめに水分損失を測ることで、自分に適した水分摂取量が分かるようになるよ!
水とナトリウムを補給する
発汗により電解質も流出します。
発汗により失われる電解質の大部分が、ナトリウムや塩化物です。
ナトリウムや塩化物は塩の成分です。
ナトリウムや塩化物が失われると酸素運搬能力や神経伝達能力に影響があります。
血圧低下、立ち眩み、倦怠感、精神不安定、眠気、脱力感などさまざまな脱水症状が現れるようになります。
発汗により、カリウムイオンやマグネシウムイオンは、あまり失われません。
水のみを与えて長時間運動させると25%の低ナトリウム状態になりました。
長時間トレーニングするには水とナトリウムを補給する必要があります。
ナトリウム錠剤は不快感を招く
ナトリウム錠剤は腸の内部で水を分泌させる作用があります。
胃腸に不快感が生じることもあるため、適しません。
ナトリウムを錠剤で摂るのは、腸の内部で水が分泌し、胃腸に不快感が出ます。
水だけの補給は無意味
長時間のトレーニングで、水だけを補給すると、尿量が増えるだけで水分状態は改善されません。
ナトリウムを含まない水分摂取は、水分補給の意味をなしません。
水だけを飲んでも尿が増えるだけで水分状態は良くならないよ!
レモンやバナナで脱水予防
食べ物から電解質を補給することもできます。
レモンやバナナはカリウムを豊富に含んでいます。
オレンジジュースやトマトジュースを飲むことで3リットルの発汗量に含まれるカリウム、カルシウム、マグネシウムを補給できます。
電解質を食べ物から摂ると、飲料のナトリウム濃度を減らすことができます。
補給食についてはこちらの記事を参考に
電解質の必要補給量は個人差が大きい
電解質の損失量は、個人差があります。
同じ人でも気温や季節により異なります。
暑熱順化しているかも大きく影響します。
暑熱順化についてはこちらの記事を参考に
トレーニング後の体重をこまめに測定して今の自分に適した水分摂取量を把握することが大切です。
トレーニング翌日の疲労感によって、水分補給が適正だったか判断できます。
補給水の最適は5℃
5℃、15℃、25℃のドリンクを摂取したところ、5℃が最も吸収が良かった実験結果があります。
トレーニングの30分前に体重1kgあたり7gのクラッシュアイスを摂取しました。
摂取しない場合と比べて15分後までの発汗量が少なくなりました。
最大パワーの65%の運動を4℃のドリンクと37℃のドリンクを摂取した場合で比べました。
結果は4℃のドリンクの方が長く運動することができました。
冷たい飲み物は体温上昇を抑えるので、無駄な発汗を抑える効果があります。
トレーニング前の水分過剰摂取の危険性
脱水を防ぐために、トレーニング前に多くの水分を摂る方法があります。
運動前に水分を過剰摂取する効果については、はっきりと分かっていません。
パフォーマンスが向上するという研究もあります。
余分な水分はすぐに排出されるため、効果は薄いとする研究もあります。
過剰に水分を摂取すると低カリウム血症のリスクが高まります。
ロードバイクはトレーニング中もボトルから水分補給できます。
トレーニング中に水分補給できない運動であれば、運動前の水分補給のメリットはあるかも知れません。
ロードバイクにおいては、事前に水分補給するメリットはあまりありません。
水分+糖質の重要性
ドリンクに糖質を加える重要性
水分補給には糖質を加える必要があります。
糖質を加えることで、エネルギー補給だけでなく小腸での水分吸収が促進されます。
高濃度の糖質は危険
糖質の濃度が濃すぎると、水分吸収が促進されなくなります。
高濃度の糖質は、胃排出速度を遅らせます。
高濃度の糖質は、高浸透圧の溶液になるため小腸に水分が流入し脱水の危険性が高まります。
高濃度の糖質とは、10%以上です。
ロードバイクの水分補給にアイソトニック飲料のポカリスエット
ポカリスエットがアクエリアスより向いている理由
ロードバイクの水分補給には、ポカリスエットが適しています。
ポカリスエットは、電解質に加えて糖質も多く含まれています。
電解質と糖質を同時に補給することで効率よく吸収できます。
炭水化物 | 6.2g |
食塩 | 0.12g |
ナトリウム | 47mg |
カリウム | 20mg |
カルシウム | 2mg |
マグネシウム | 0.6mg |
アクエリアスはポカリスエットに比べて糖質の量が少ないです。
脱水予防という観点からは、ポカリスエットの方が優れています。
アイソトニック飲料VSハイポトニック飲料
アイソトニック(等張性)飲料とは、体に含まれる水分と電解質濃度が同じ飲料のことです。
ハイポトニック(低張性)飲料とは、体に含まれる水分よりも電解質濃度が低い飲料のことです。
「電解質を補給する」という観点からなら、アイソトニック飲料飲料を選ぶべきです。
トレーニング時には大量の汗をかくので電解質の損失が大きいです。
極端な低張性飲料では失われた電解質を補給することができません。
電解質を補給するという観点からは、アイソトニック飲料が適しています。
ポカリスエットはアイソトニック飲料だよ!
浸透圧の重要性
補給する水分の浸透圧は、胃排出速度と小腸への水分流入の両方に影響を及ぼします。
血漿量を適切な浸透圧に保つために必要な電解質の濃度は下の表の通りです。
ナトリウム | 50mg/100ml |
塩化物 | 70mg/100ml |
カリウム | 10mg~20mg/100ml |
好みの味を選ぶ
ポカリスエットやアクエリアスには、味が数種類あります。
味は、水分補給量に大きな影響を与えます。
味のついている飲料は、無味のものより多く摂取される傾向があります。
運動中に摂取すべき唯一の電解質は、ナトリウムです。
ナトリウムは塩味があるため、水分摂取を妨げます。
味をつけることで、不快感なくナトリウムを摂取できるようになります。