低酸素ルームでロードバイクトレーニング!効果あり!?なし!?やり方・メリット・デメリットを紹介!!

Contents

身近になってきた低酸素トレーニング

トップアスリートだけのトレーニングじゃない!?

低酸素トレーニングができるジムが増えてきたね!

一部のトップ自転車選手のトレーニング手段だった低酸素トレーニング。

低酸素ジムの増加によりアマチュア自転車選手でも低酸素トレーニングができる環境が整いつつあります。

低酸素トレーニングはロードバイクトレーニングに効果があるのでしょうか。

メリット・デメリットも紹介します。

高地トレーニングについてはこちらの記事を参考に

ロードバイクトレーニング的高地トレーニングのすすめ やり方からメリット・デメリットまで解説!

低酸素トレーニングのメリット

需要が高まる低酸素トレーニング

ドーピング検査の精度が向上したことでトップアスリートは薬物によるパフォーマンス向上が困難になっています。

ドーピングについてはこちらの記事を参考に

【サイクルロードレースの次世代ドーピング】遺伝子ドーピングとは!?

持久系アスリートにとって高地トレーニングや低酸素トレーニングへの需要は増加しています。

ロードバイクトレーニングを低酸素でやる最大の効果は有酸素能力の向上!

有酸素能力の向上

低酸素トレーニングがロードバイク選手の持久的能力を向上させることが分かっています。
低酸素トレーニングすると次の事が起こります。
・赤血球産生の増加
・ヘモグロビンの質量増加
・ミトコンドリアの増加
これらの変化に最も影響を与えるのがEPOです。

ミトコンドリアについてはこちらの記事を参考に

【ロードバイク】ミトコンドリアを増やしてVo2max上昇!

EPO濃度の増加
EPOはエリスロポエチンの略称で、赤血球の産生を促進します。

EPOは腎臓から分泌される造血ホルモンだよ!


EPOは腎臓から分泌される造血ホルモンです。
EPOを錠剤から服用するとドーピングになります。

EPO錠剤は1990年代から禁止薬物に指定されています。

EPOを外部から摂取するとドーピングになるんだね!

それくらいEPO濃度はレース結果を左右するよ!


低酸素トレーニングを行うとEPO濃度が急上昇します。

細胞が低酸素状態になった時にHIFというEPOの転写因子が活性化されるためです。

HIFは鉄の取り込みやヘモグロビンの産生も促進します。

酸素運搬能力が向上します。
EPO濃度はトレーニング後48時間から72時間でピークを迎えます。
EPOが上昇することでVO2MAXが改善します。
低酸素トレーニングで上昇したEPO濃度は16日間維持されたとする実験結果があります。

多くの場合EPO濃度は2週間から4週間かけてゆっくりと元に戻ります。

上昇したEPO濃度は72時間でピークを迎え、2週間から4週間で元に戻るよ!

EPO濃度の上昇はロードバイク選手にとって大きなメリットになります。

低酸素トレーニングのデメリット

低酸素トレーニングは良い事ばかりではないよ!

トレーニング強度の低下

最大のデメリットはトレーニング強度を維持できないこと!

低酸素環境下で行うトレーニングは強度が落ちてしまいます。
長期間高所に滞在してトレーニングすると体は高所順応しますが肝心のトレーニングの質が低下する可能性があります。

長期間高所に滞在する時は注意が必要だね!

高地でSPO2が低下する選手はトレーニング強度が落ちやすい傾向があります。

SPO2って何?

SPO2とは血液の酸素飽和度です。

血液中のヘモグロビンに結合している酸素の量の比を%で表したものです。

正常値は96%から99%です。

高地でSPO2が下がりやすい人は遺伝的な問題や鉄分不足が考えられるよ!

高地でもSPO2が下がらない選手はトレーニング強度が下がりにくくなります。

高地トレーニングの効果も大きくなります。


疲労回復の遅れ

リカバリーが難しくなるよ!


低酸素ルームなどで頻繁に長時間トレーニングすると普段より疲労が蓄積しやすくなります。
ストレスホルモンの分泌により疲労回復が遅れると考えられています。
低酸素トレーニングを行う時は普段よりも疲労回復に気を遣う必要性があります。

リカバリーについてはこちらの記事を参考に

ロードバイクトレーニングのアクティブリカバリー(積極的休養)は効果あり!?なし!?リカバリーライドの効果を検証!

ロードバイクトレーニング後の交代浴・水浴療法!!お湯に浸かって疲労回復!

体調不良の選手はEPO濃度が上昇しにくくなります。

高地で体調不良になった場合はトレーニングを中断して回復に努めた方が合理的です。


個人差が大きい

誰にでも強い効果がある訳ではないよ!


低酸素トレーニングに対する反応は個人差が大きいと言われています。
遺伝的要素があると推測されています。

高地トレーニングで5000m走の記録が向上した選手は最初の30時間でEPO濃度が大きく上昇しました。

14日後でもEPO濃度が高いままでした。

5000m走の記録が向上しなかった選手は14日以内にEPO濃度が高地トレーニング前に戻りました。

低酸素トレーニングの効果が出やすい選手はEPO濃度が上がりやすくて、高濃度を2週間維持できるよ!

鉄分欠乏症の選手も高地トレーニングの効果が表れにくくなります。

鉄分の不足は多くの持久系アスリートに見られる症状です。

鉄分不足は赤血球量やヘモグロビン量を抑制します。

鉄分欠乏症の選手が高度2500mで4週間トレーニングを行ったところ、EPO濃度は上昇しましたが赤血球量は増加しませんでした。


効果が徐々に低下

低酸素トレーニングを始めた頃は効果が大きくても、持続することは少ないよ!


大学4年間を通して自転車選手が低酸素トレーニングを行うと1年生や2年生に比べて3年生や4年生はトレーニング効果が徐々に落ちていきます。
体が低酸素環境に順応することでトレーニング効果が低下していきます。
普段のトレーニングと同じように低酸素トレーニングも違う刺激を入れ続ける事が大切です。

低酸素ルームの酸素濃度

低酸素ルームの設定高度

低酸素ルームの設定高度はどれくらいが良いの?

低酸素トレーニングを適切に行えばほとんどの選手のパフォーマンスが向上します。

高度が上昇すると酸素分圧が減少します。

高度が高いほどEPO産生は促進されます。

高度2000mでのEPO濃度上昇は24%から30%です。

6時間後にピークを迎えます。

高度2450mから2800mでEPO濃度は77%から92%にまで上昇します。

24時間後まで上昇し続けました。

高度2500mから3000mに1日12時間から13時間滞在するとEPO濃度は平地の400%まで上昇します。

設定高度が高いほどEPO濃度は上昇するけどトレーニング強度が維持できなくなるし、体調不良の可能性も高くなるよ!

酸素濃度と高度の目安

低酸素ルームの酸素濃度と高度の目安だよ!

高度酸素濃度
海面~500m19.8%~20.9%
低高度500m~2000m16.7%~19.8%
中高度2000m~3000m14.8%~16.7%
高高度3000m~5500m10.9%~14.8%
極高高度5500m~~10.9%
酸素濃度と高度の目安

3種類の低酸素トレーニング

低酸素トレーニングは3種類の方法に分かれるよ!

低酸素トレーニングは3種類に分類されます。

Living High-Training  High法(LHTH)

生活もトレーニングも低酸素!


高所で生活し、高所でトレーニングするのがLivingHigh-Training High法(LHTH)です。
最初に考え出されたトレーニング方法です。
標高2000mから2500mで生活し、トレーニングします。

トレーニング期間は3週間から4週間です。

LHTH法は1968年にメキシコシティ五輪で東アフリカの選手が活躍したのをきっかけに注目されました。

LHTH法はメキシコシティ五輪がきっかけで注目されたよ!

高地トレーニングと聞けばこの方法を連想するのではないでしょうか。
LHTHは低酸素環境でトレーニングするため、強度を維持できないという大きな欠点があります。

12人のランナーを2グループに分けて低地と高度2300mの高地でトレーニングさせました。

2グループはそれぞれ低地と高地を交代でトレーニングしました。

2グループともVO2MAXが2.8%低下し、3000m走のタイムも悪化しました。

エリートランナーを対象にした実験では最大3週間に渡ってパフォーマンス低下がありました。

LHTH法は長期間高地に滞在するため費用と時間も必要です。

LHTHはトレーニング強度が低下し、費用と時間がかかるよ!

Living High-Training Low法(LHTL)

最も注目されているのがLHTL法!


高所で生活し低所でトレーニングするのがLivingHigh-Training Low法(LHTL)です。
高所で生活することで赤血球産生が促進されます。
低所でトレーニングするので強度も維持できます。

2500mで生活し1250mでトレーニングします。

期間は3週間から4週間です。

1日12時間以上低酸素環境で過ごす必要があります。

高所と低所の良いとこ取りだね!


EPOの産生と血漿レベルの向上が期待できます。

低所と高所を往復する必要があるため長期合宿が可能な一部の選手に限られた方法です。
費用と時間が必要です。

低所と高所を頻繁に移動するので時間と費用がかかるね!

このデメリットを解消するために低酸素テントで就寝する方法があります。

一部の箱根駅伝強豪校はこの方法を採用しています。

ランナーを対象にした実験ではVO2MAXが5%向上し5000m走のタイムも向上しました。

他の実験でも同じような結果が出ています。

LivingLow-Training High法(LLTH)
低所で生活し高所でトレーニングするのがLivingLow-Training High法(LLTH)です。
低酸素ルームを使ったトレーニングはLLTHに分類されます。

低酸素ルームもLLTHだね!


LLTH法のメリットは低酸素の暴露時間が短い事です。
低所で生活することで費用と時間を抑える事ができます。
低酸素ルームでトレーニングすることで高所に移動する時間を節約することができます。

サブエリートアスリート選手はLLTH法でパフォーマンス向上が見られました。

エリート選手はLLTH法でパフォーマンスは向上しませんでした。

エリート選手は低酸素に長時間滞在するLHTL法が有効であると考えられています。

エリート選手にLLTH法は効果的ではないと考えられているよ!

低酸素ルームでのロードバイクトレーニング方法

低酸素ルームでのトレーニング方法を紹介するよ!


低酸素ルームでのトレーニングはLivingLow-Training High法(LLTH)に分類されます。
LLTHで行うトレーニングは数種類あります。

  • 耐久走トレーニング
  • インターバルトレーニング
  • スプリントインターバルトレーニング
  • レジスタンストレーニング(筋トレ)

耐久走トレーニング・低強度インターバルトレーニング

低酸素ルームでの有酸素運動で最も期待されるのはEPO濃度の上昇です。

EPO濃度が上昇することで赤血球が増加します。

赤血球濃度が上昇すると逆に血漿量が減少してしまいます。

血漿量が減少すると血液の粘度が低下してしまいます。

血漿とは血液の液体成分で通常は血液の55%を占めるよ!

赤血球が増えると血漿が減るので血液がドロドロになりやすくなるんだね!

酸素運搬能力は向上しますが循環系における酸素運搬能力に悪影響がある可能性があります。
耐久走トレーニングと低強度インターバルトレーニングを行った結果、持久力が向上した実験結果があります。
しかし、効果がなかったとする実験結果もあります。

有酸素能力が向上した実験結果が多いけど、効果がなかったとする実験もあるよ!


アマチュア水泳選手を対象にした実験
週3回の頻度で3時間以下のトレッドミルを使った低酸素トレーニングを6週間行いました。
トレーニング内容は耐久走、インターバルトレーニングです。
その結果、VO2MAXの向上と400m記録の改善が見られました。
スプリントインターバルトレーニング

低酸素環境での無酸素域トレーニングについては評価が分かれているよ!

まだはっきりしていないんだね


低酸素環境で高強度インターバルトレーニングを行うと無酸素能力が向上しました。
陸上400mの選手を対象にした実験があります。
標高3000m相当に設定した低酸素ルームでスプリントトレーニングを1か月実施しました。
実験期間前と実験期間後の1分間の全力ペダリングは期間後に上昇しました。

陸上400m選手が低酸素環境で1か月トレーニングすると無酸素能力が向上したよ!


別の実験もあります。
低酸素環境下でウォーミングアップ、耐久走、インターバルトレーニング、レジスタンストレーニングを6週間実施しました。
筋力と持久力は向上しましたがVO2MAXと無酸素パワーは変化がありませんでした。

この実験では効果がなかったんだね

低酸素環境での無酸素域トレーニングは普段のパワーが出せません。

スプリントトレーニングを低酸素ルームでのみで行うとスプリント能力が低下する可能性があります。

低酸素トレーニングの効果

期間による違い

低酸素トレーニングは期間によりトレーニング効果が違います。

LHTH法でのトレーニング効果だよ!

トレーニング初日~7日目3日目~14日目14日目~20日目
パフォーマンス向上パフォーマンス低下・トレーニング能力低下パフォーマンスの高い状態での停滞
期間別LHTH法のトレーニング効果

LHTH法とLHTL法のトレーニング効果の違い

LHTH法は低地に戻ってもすぐにトレーニング効果が出ることはありません。

36日後から46日後に効果が表れる可能性があります。

LHTL法は最初の数日で効果が表れます。

低地に戻り2週間後にパフォーマンスは元に戻ります。

LHTH法とLHTL法のトレーニング効果の違いだよ!

トレーニング法一日の低酸素時間生活高度トレーニング高度トレーニング効果(エリート)トレーニング効果(サブエリート)
LHTH法24時間1200m~2700m1600m~2400mー1.6%±2.7%ー0.9%±3.4%
LHTL法18時間~24時間1800m~2800m800m~1250m4.0%±3.7%4.2%±2.9%
低酸素トレーニングの効果

低酸素トレーニングはLHTH法よりLHTL法の方が効果が高いです。

エリート選手よりサブエリート選手の方が効果が出やすいです。

低圧低酸素ルームVS常圧低酸素ルーム

低酸素ルームは低圧と常圧があるよ!

低酸素ルームは低圧と常圧があります。

低圧低酸素ルーム

以前からあるのが低圧低酸素ルーム

以前は低酸素ルームは低圧のみでした。

費用がかかり、圧力管理が必要なため専門的な知識も必要でした。

低酸素ルームでトレーニングできるのは一部の限られた選手のみでした。

自然の高地は気圧も下がるので低圧低酸素です。

常圧低酸素ルーム

近年になり開発されたのが常圧低酸素ルーム

常圧低酸素ルームは窒素濃度を上げて酸素濃度を低くしています。

気圧は1気圧です。

1990年代初頭に開発されました。

常圧のため利便性や安全性が高くなりました。

多くのジムで導入されているのは常圧低酸素ルームです。

多くのジムにあるのが常圧低酸素ルームなんだね!

低圧VS常圧 効果の違い

大学自転車選手を対象に低圧低酸素ルームと常圧低酸素ルームの効果の違いを比較しました。

高度は3000m相当です。

VO2MAX80%から100%強度の2分間インターバルを5本行いました。

トレーニング時間は30分です。

週3回のトレーニングを8週間行いました。

トレーニング回数は24回です。

低圧でも常圧でも有酸素能力に違いは出ませんでした。

無酸素能力は低圧低酸素ルームで実施した被験者の方が上昇しました。

低圧低酸素ルームの方が無酸素能力が向上する可能性があるんだね!

高度順応への違い

低圧低酸素環境でトレーニングすると低圧低酸素環境でのパフォーマンスが向上しました。

常圧低酸素環境でトレーニングしても低圧低酸素環境のパフォーマンスは向上しませんでした。

低圧と常圧のトレーニング効果は同じではないと考えられています。

例えば登山のための低酸素トレーニングは低圧環境で行う必要性がありそうです。

参考文献

Aerobic Continuous and Interval Training under HypoxiaEnhances Endurance Exercise Performance with Hemodynamic and Autonomic Nervous System Function in Amateur Male Swimmers

2種類の疑似高所での滞在および運動中の生理応答とトレーニング効果の差に関する研究 前川剛輝

Hypoxic training methods for improving endurance exercise performance  

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