【サイクルロードレースの次世代ドーピング】遺伝子ドーピングとは!?
選手と大会運営側のいたちごっこが続くドーピング問題が近年になり新しいステージに突入したよ
新しいステージ?
検査困難な遺伝子ドーピングの登場でスポーツ界はより混沌とした状態になっていくかも
次の論文を参考にしました。
遺伝子ドーピングの形而上学:遺伝子を操作することの道徳性をめぐって 竹村瑞穂 日本福祉大学 スポーツ科学部
オリンピックとドーピングについて考える 野口将暢
Contents
目次
なくならないドーピング問題
スポーツがある限り、ドーピング問題はなくならないよ!
1990年代までのドーピング
1990年代までは興奮剤や筋肉増強剤、血液ドーピングが主流でした。
以前は薬品を使ったり、輸血をする方法が主流だったよ!
サイクルロードレースのドーピングで最も有名なランス・アームストロングが用いたドーピングも薬品や血液ドーピングでした。
全米反ドーピング機関(USADA)は2012年にランス・アームストロングに対して1998年以降の全タイトルの剥奪と自転車界からの永久追放を発表しています。
ランス・アームストロングのドーピング問題は世界を震撼させたよ!
ドーピングは新たなステージへ突入
21世紀になり、ドーピングは次のステージへ突入したよ
2000年前後からドーピングは新しいステージに突入します。
遺伝子ドーピングの出現です。
遺伝子は先天的なもので、操作することはできないものでした。
遺伝子ドーピングは本来先天的に決まっている人間の身体を後天的に操作しようとする試みです。
なぜドーピングは禁止されるのか
ドーピングは悪いって思うけど・・・
ドーピングが禁止される4つの理由
ドーピングが禁止されている理由は4つあると言われています。
- スポーツの価値を損なう
- 公平性を害する
- 選手の健康を損なう
- 社会に悪影響を及ぼす
スポーツは一定のルールや公平性の基に行われるべきでドーピングは公平性を害するという考え方です。
ドーピング=悪は近代になってから!?
昔からドーピングが禁止されていたわけではないよ!
ドーピングが悪いものと考えられるようになったのは比較的近代になってからです。
1904年のセントルイスオリンピックではマラソンの金メダリストにレース途中で何度も薬物が投与されました。
投与したのは医師です。
競技中に薬物を投与していたの!?
興奮剤などの薬物がマラソン競技に有効だということを証明するためだよ!
医師は走っている選手の状態を診て興奮剤などの最適と思われる薬物を随時投与しました。
競技終了後には薬物投与の詳細を報告しました。
マラソン競技に薬物投与が有効であることを証明するためです。
薬物を投与された選手は2位でした。1位の選手は途中で自転車に乗っていたことが発覚し後に失格となりました。
薬物を投与した選手は2位だったけど1位の選手が自転車で移動したことが判明して繰り上げ金メダルになったよ!
スゴイ時代・・・
サイクルロードレース界のドーピング
サイクルロードレースの歴史はドーピングの歴史でもあるよ
サイクルロードレースのドーピング問題は歴史が古く、1880年代にはすでに薬物の使用が報告されています。
ロードレース界では1950年代にアンフェタミンの使用が広がりました。
アンフェタミンは興奮剤の一種です。
薬物の規制が始まったのは1965年からです。
1965年以前はドーピングの定義も曖昧だったよ
1967年のツールドフランスではイギリスの選手が薬物の過剰摂取で競技中に死亡しています。
トップ選手だったトム・シンプソンがレース中に亡くなったよ。
原因はアンフェタミンとアルコール、利尿剤を飲んだことだと言われているね。
近代になりドーピングは禁止される
1968年のメキシコオリンピックからドーピング検査が導入されます。
現在に至るまでドーピングは絶えることなく進化し続けています。
禁止されてもドーピングはなくならないね!
2000年シドニーオリンピック以降は更に厳しい規制となります。
体内に禁止薬物があるかどうかのみを問い、その理由は問わないことが明文化されました。
どういう意味?
意図せずに禁止薬物を摂取しても処分されるようになったよ!
遺伝子ドーピングも規制も対象
遺伝子ドーピングも禁止項目に追加されたよ!
2003年から世界アンチドーピング機構(WADA)は遺伝子ドーピングを禁止項目に加えました。
ドーピングは大会出場に関しては違反となります。
日本国内で法律で禁止されているわけではありません。
禁止薬物は覚せい剤のように摂取したから逮捕されるわけではないよ!
アナボリックステロイドの製造は薬事法で規制されていますが、個人の使用は違法ではありません。
世界でもっとも権威のあるボディビル団体であるIFBBの主催するミスターオリンピアはドーピングが暗黙の了解となっています。
一部のボディビル大会はドーピングを黙認しているね
ドーピングと治療の境目を定義するのも難しい問題です。
視力が0.01のほとんど見えない人を1.0にするのは治療と言えそうです。
ゴルフなど視力が重要な競技で視力0.8の選手を3.0にするのは治療でしょうか、ドーピングでしょうか。
ドーピングの線引きは難しい!
遺伝子ドーピングとは
遺伝子ドーピングて具体的にどういう方法?
遺伝子ドーピングは体細胞操作と生殖細胞操作に分かれます。
遺伝子ドーピング 体細胞操作
体細胞操作は体細胞の遺伝子情報を操作します。
体細胞操作は体細胞の遺伝子を操作する方法!
肉体的な増強のために筋作用や筋機能を向上させます。
遺伝子ドーピング 生殖胞操作
生殖細胞操作は卵細胞や精細胞、受精卵を操作するため遺伝子操作が子や孫まで引き継がれていきます。
生殖細胞操作は子や孫に受け継がれてしまうんだね
子や孫の意志と関係なく遺伝子操作がされてしまいます。
体細胞操作の例
- インスリン様成長因子遺伝子を細胞に導入し骨格筋を異常肥大させる(マウス実験で成功)
- 筋肉の成長を抑制するミオスタチンに変異を与え、筋肥大化させる
遺伝子操作は医療分野にも応用されているよ!
筋肉が萎縮する筋ジストロフィーに遺伝子治療が期待されています。
病気の原因遺伝子を修復した後に移植して運動機能を回復させるマウス実験に成功しています。
治療目的の体細胞操作は倫理的問題はありません。
治療を目的にした遺伝子操作は問題ないね!
遺伝子選択
親やコーチが胎児や乳幼児の遺伝子情報を調べて特定のスポーツ選手として子供を選り分ける手法です。
遺伝子ドーピングが急速発展した要因 第三世代のゲノム編集技術クリスパー・キャス9とは!?
遺伝子ドーピング クリスパー・キャス9とは
近年になり遺伝子ドーピングが急発達したのは技術の進歩が要因!
第三世代のゲノム編集技術であるクリスパー・キャス9(CRISPER/Cas9)により遺伝子工学が急速に発展しました。
細胞内で直性DNAを操作できるようになりました。
クリスパー・キャス9は2012年から2013年頃に技術的に確立されました。
クリスパー・キャス9が確立されたのはごく最近だよ!
DNAのゲノム編集がより簡単にできるようになりました。
目的の遺伝子を壊したり置き換えたりする技術です。
安く短時間で行える上に失敗が少なくなりました。
遺伝子のコピー&ペーストができるんだね!
クリスパー・キャス9は人類にとっては有益
クリスパー・キャス9はドーピングという負の側面もあるけど人類にとっては有益な技術だよ!
遺伝子ドーピングという負の側面に目が行きがちですが、人類にとっては有効な技術です。
クリスパー・キャス9により食糧不足の解決や遺伝子変異が原因の病気の治療が期待されています。
腐りにくい野菜や肉の量を増やした牛を造ることができます。
パーキンソン病など遺伝子変異で起こる病気を治療できます。
病気を治したり、食糧危機を救ったりできるんだね
遺伝子操作で病気の実験動物を自由に作れるので薬や治療技術の開発も期待できます。
遺伝子ドーピングは摘発できる!?
遺伝子ドーピングを摘発するのは困難と考えられているよ!
スポーツはルールに従う事に同意した上で参加します。
ドーピングはルールに従っているかのように振舞う行為です。
遺伝子ドーピングは現在の検査技術では陽性になりません。
ドーピング検査をかいくぐる技術が規制力を遥かに上回った状態です。
東京オリンピックは大丈夫!?
東京オリンピックでも遺伝子ドーピングは行われるの!?
遺伝子ドーピングは従来のドーピングよりも組織的な援助が必要です。
西側諸国は情報の統制が難しいので組織的な遺伝子ドーピングは困難と考えられています。
遺伝子ドーピングをするには国家ぐるみで情報統制ができる限られた国に限られます。
遺伝子ドーピングをするには情報漏洩しない国家ぐるみの取り組みが必要!
遺伝子ドーピングの技術はまだ完成していなと言われています。
国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は5日、ポーランドのカトウィツェで始まった「スポーツのドーピングに関する世界会議」で、東京五輪での違反摘発の強化を目指した遺伝子検査が導入される可能性を明らかにした。世界反ドーピング機関(WADA)に新検査法の承認を期待し「抑止力の強化につながる」と述べた。
産経新聞2019年11月6日付
おそらく東京オリンピックでは遺伝子ドーピングはないと考えられるよ!
遺伝子ドーピングとは まとめ
- 1990年代までは興奮剤や筋肉増強剤、血液ドーピングが主流
- ドーピングが悪いものと考えられるようになったのは比較的近代になってから
- サイクルロードレースでは1880年代にはすでに薬物の使用が報告されている
- ランス・アームストロングが用いたドーピングも薬品や血液ドーピングだった
- 2003年から世界アンチドーピング機構(WADA)は遺伝子ドーピングを禁止項目に加えた
- 遺伝子ドーピングは体細胞操作と生殖細胞操作に分かれる
- 体細胞操作は体細胞の遺伝子情報を操作する
- 生殖細胞操作は卵細胞や精細胞、受精卵を操作する
- 第三世代のゲノム編集技術であるクリスパー・キャス9(CRISPER/Cas9)により遺伝子工学が急速に発展した
- 遺伝子ドーピングは現在の検査技術では陽性にならない
- 遺伝子ドーピングは従来のドーピングよりも組織的な援助が必要
- おそらく東京オリンピックでは遺伝子ドーピングはない