ロードバイクの2大エネルギー源「脂肪と糖」のもの凄く深い関係を知ってダイエットやレースに活用する方法
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目次
ロードバイクのエネルギー戦略
特異な持久系種目「ロードバイク」
ロードバイクは、長時間の運動です。
レースやトレーニングは、2時間を超えることもあります。
2時間を超える持久系競技には、マラソンがあります。
ロードレースとマラソンは大きな違いがあります。
マラソンは比較的、運動強度が一定の競技です。
駆け引きによりペースの上下はありますが、ゴール以外でスプリントすることはありません。
逆に、ロードレースのように脚が止まることもありません。
ロードレースは、ペースが目まぐるしく上下します。
トレーニングも、Z2からZ6まで幅広い強度が必要です。
Z(ゾーン)についてはこちらの記事を参考に
【ロードバイク】パワー・心拍・RPEを使ったゾーン設定とトレーニングへの活用
ロードバイクのエネルギー戦略
Z2とZ6は、エネルギー源が全く異なります。
Z2はマラソンに近いですが、Z6は100m走に近いです。
ロードバイクのエネルギー源は脂肪と糖です。
脂肪と糖の関係を理解することで、ロードバイクに必要なエネルギー戦略を理解できます。
補給や普段の食事への応用ができるようになります。
水分補給についてはこちらの記事を参考に
エネルギー源を理解する必要性
ロードバイクに乗る理由は人それぞれです。
ダイエット目的の人や、レースで勝利を目指す人もいます。
使われるエネルギー源を理解することで、自分の目的に合った補給食や食事を選べるようになります。
トレーニング中やレースの重要局面で、パワーが発揮できなくなった理由を理解できるようになります。
運動強度によって変化するエネルギー源
運動強度によるエネルギー源の違い
ロードバイクを前に進めるには、必ず筋収縮が伴います。
筋収縮には、エネルギーが必要です。
運動強度が上がると、エネルギーの消費量が増えます。
パワーの上昇とエネルギー消費は、相関関係があります。
安静時の糖:脂肪の利用率は1:2です。
安静時は、主に脂肪を消費してエネルギーにしています。
安静時の脂肪からのエネルギー供給量は、必要量を上回っています。
安静時は脂肪の利用率が高いですが、脳を中心に多くの糖も使われています。
糖についてはこちらの記事を参考に
ロードバイクの糖質補給量=酸化速度が最大かつ胃腸の不快感がない量
激しい運動には糖が使われる
運動強度が上がると、糖の利用が増えます。
糖の利用が増えますが、脂肪も多く使われます。
脂肪が全く使われなくなることは、ありません。
リカバリーライド(Z1)程度の低強度運動では、必要なエネルギーに十分見合う量が脂肪から供給されます。
更に運動強度が上がると、糖の相対的な利用率は高まります。
65%VO2MAXを超えると、脂肪から供給されるエネルギーと消費されるエネルギーが釣り合うようになります。
更に強度が上がると、脂肪の貢献度は減少します。
80%VO2MAXでは、糖:脂肪の利用率は2:1です。
脂肪の利用率が大きく下がります。
この場合でも、絶対的なエネルギー量が増えているので安静時より遥かに多くの脂肪が消費されます。
運動強度が最大まで高まると、糖を中心にエネルギーが作られます。
補給食についてはこちらの記事を参考に
ロードバイクの補給食・炭水化物補給にベストな選択 安価で使いやすい「粉飴」を徹底解説
エネルギー源である脂肪と糖の関係
運動強度が上がると糖が利用される理由
運動強度が上がると、糖の利用率が増えます。
糖の利用率が増えるのは、次の3つの要因が大きいです。
- 脂肪は糖より数倍大きい
- 脂肪は水に溶けないが糖は水に溶ける
- 脂肪組織への血流量低下
脂肪は糖より数倍大きい
脂肪は分子量が800を超えますが、糖は分子量が180です。
脂肪は水に溶けませんが、糖は水に溶けます。
脂肪は水に溶けず、糖より数倍大きいという特徴があります。
脂肪は糖より大きい分、エネルギーに変換しにくくなります。
脂肪は非水溶性で糖は水溶性
脂肪は水に溶けないので、糖に比べると代謝経路が複雑になります。
脂肪は脂肪酸に分解され、血液に放出されます。
脂肪酸は水に溶けないので、タンパク質などにくっついて運ばれる必要があります。
血液によって運ばれた脂肪酸は筋肉に取り込まれます。
そして筋肉内のミトコンドリアでエネルギーになります。
ミトコンドリアについてはこちらの記事を参考に
ミトコンドリアを増やすとロードバイクが速くなる理由と効率的なミトコンドリアの増やし方
一方、糖は水に溶けるので血液中に放出されるとそのまま全身に運ばれます。
血液により運ばれた糖は筋肉に取り込まれ、ミトコンドリアでエネルギーになります。
脂肪組織への血流量低下
血流量も影響します。
運動強度が上がると、脂肪組織への血流が減ります。
脂肪組織への血流が減ると、脂肪分解が低下して利用率が下がります。
脂肪と糖質のエネルギーバランス
脂肪と糖質のエネルギーバランスは、逆の関係性があります。
脂肪をエネルギーにする割合が増えると、糖をエネルギーにする割合が減ります。
逆に糖をエネルギーにする割合が増えると、脂肪をエネルギーにする割合が減ります。
糖質を多く摂取すると、脂肪酸化が抑制されます。
脂肪酸化が抑制されると、脂肪貯蔵が促進されます。
糖質の摂取が少ないと、脂肪酸化が促進されます。
脂肪についてはこちらの記事を参考に
【ロードバイクと食事】ロードレーサーにとって「良い脂質」「悪い脂質」 脂質を知れば速くなる!
ロードバイクのエネルギー源としての脂肪
脂肪は無限のエネルギー源
糖質は貯蔵量に限りがありますが、脂肪は体内に豊富に蓄えられています。
脂肪はほぼ無限にエネルギー供給することができます。
仮にロードバイクに必要なエネルギーを全て脂肪で賄えれば、無限に力を出すことができます。
脂肪はエネルギーに変換しにくい
脂肪は糖に比べると代謝経路が複雑で、エネルギーに変換しにくいです。
しかし、脂肪は水に溶けないので浸透圧に影響せず多く貯蔵できます。
脂肪は、エネルギー密度が糖質より高いです。
水に溶けないので、貯蔵エネルギーあたりの重量は小さいです。
脂肪はエネルギー密度が高い代わりに、酸化するのに多くの酸素を必要とします。
糖質の約4.5倍の酸素を必要とします。
運動強度が上がると脂肪利用が制限される理由
運動強度が上がると脂肪の利用率が減少する理由の一つが、血漿への脂肪酸出現率の減少です。
血漿への脂肪酸出現率が減少する理由は、脂肪組織への血流量の減少があります。
脂肪組織へ流れる血流が減る事で、血漿中の脂肪が減少し、利用率が下がります。
更に、脂肪酸を血液で運搬するのに必要なタンパク質の一種であるアルブミンが減少することも理由にあります。
一方、糖質は水に溶けるので、血漿への放出は血流に依存しません。
従って、運動強度が上がると糖質の利用割合が高くなります。
運動強度が上がると、脂肪のエネルギー利用の調整が筋肉内で行われるようになります。
運動強度が上がると、糖をエネルギーにする解糖系が促進され、脂肪の酸化が抑制されます。
スプリントについてはこちらの記事を参考に
ロードバイクのスプリント力に直結する「無酸素パワー」への大きな誤解
脂肪利用を促進する試み
体内にほぼ無限に貯蔵されている脂肪を高強度運動に使えるようにする試みがなされてきました。
糖質の利用を制限し、脂肪を多く利用することでパフォーマンスを向上できると考えられました。
脂肪の利用を推進するために次のような手法が試されてきました。
- トレーニング前の脂肪摂取
- トレーニング中の中鎖脂肪酸油摂取
- カフェイン摂取
しかし、どの方法も明らかに効果があるとする結果は得られませんでした。
ロードバイクのエネルギー源としての糖質
糖はターボエンジン
糖は、脂肪に比べると素早くエネルギーになります。
糖がエネルギーになる経路は複雑で、反応段階も多いですが脂肪に比べると簡単です。
糖はターボエンジンのようなものです。
エネルギー消費は激しいですが、短時間で大きなパワーを出せます。
糖は運動強度の変化に合わせて急にエネルギー変換量を増やせることも、大きな特徴です。
急激に増えた運動量をカバーするのに糖が使われます。
糖は急速にエネルギーになるが短時間で尽きる
急速にエネルギーに変換できる糖が大量にあれば、何度でもスプリントを繰り返すことができます。
しかし、糖は継続して大量のエネルギーを供給することができません。
1kmタイムトライアルの後半は、糖分解が持続しません。
糖分解は数十秒しか持続しません。
グリコーゲン濃度を極端に低下させないための自己防衛と考えられています。
マラソンで後半30km以降に失速するのは、グリコーゲン濃度の低下が大きな要因の一つです。
糖が枯渇すると、脂肪が残っていてもマラソンの運動強度を維持できなくなります。
糖が体内に多量に貯蔵できない理由
糖は、グルコースとグリコーゲンで体内にあります。
グルコースは血液に溶けています。
グリコーゲンはグルコースが集まったもので、肝臓や筋肉に多くあります。
筋肉に1500㎉、肝臓に500㎉のグリコーゲンがあります。
筋肉のグリコーゲン濃度は肝臓よりも低いですが、量が多いので総量が大きくなります。
肝臓は比較的小さな臓器なので、グリコーゲンの貯蔵器官としては貯蔵量が限られています。
体内の筋肉量も限界があるため、グリコーゲンは脂肪のように大量に貯蔵することはできません。
食事についてはこちらの記事を参考に
ロードバイクのエネルギー戦略への応用
脂肪は補給の必要がないが、糖は補給しないと使いつくしてしまう
グリコーゲンを多く貯蔵できれば、高強度の運動を長時間維持できることになりますが現実には困難です。
90分を超えると、筋グリコーゲンの枯渇によりパフォーマンスが低下すると言われています。
糖の枯渇によるパフォーマンス低下を防ぐには、普段の食事から気をつける必要があります。
持久系トレーニングをする人は、「低糖質ダイエット」は絶対に避けるべきです。
普段の食事で良質な糖を摂る事で、体内の貯蔵量を増やせます。
トレーニング中の糖質摂取も重要です。
トレーニン時間が90分を超える場合の糖質摂取量は30g/時から60g/時が推奨されています。
トレーニング強度が高い場合は90g/時まで増やすこともできます。
脂肪は体内に豊富に貯蔵されており、トレーニング中に摂取しても消化・吸収できません。
従って、トレーニング中に脂肪を摂取する必要はありません。
補給についてはこちらの記事を参考に