ロードバイクのCTL 活用法と事例を元に限界を解説
Contents
目次
ロードバイクの体力を表す指標「CTL」
長期的トレーニング負荷「CTL」
CTLはChronic Training Loadの略で、長期的トレーニング負荷と訳されます。
CTLは体力を表します。
ストラバやTRAININGPEAKSでは「Fitness」と呼ばれます。
過去42日間のトレーニング負荷に基づいて導き出されます。
ロードバイクの用語についてはこちらの記事を参考に
ロードバイクでパワートレーニング CTL・ATL・TSBでパフォーマンス管理
CTLの算出
CTLはTSSを基に算出します。
TSSはトレーニング・ストレス・スコアの略です。
1回のトレーニングで体にかかった負荷を表す数値です。
トレーニング強度とトレーニング時間から算出されます。
TSSについてはこちらの記事を参考に
【ロードバイク】TSSのトレーニングへの活用方法と4つの限界
CTLは、過去42日間のTSSの加重平均です。
6週間前より、最近のトレーニングの方がより重視されます。
TrainingPeaksやGoldenCheetahといったパワー解析ソフトを使えば、自動で算出されます。
CTLは、トレーニングで最も重要な数値の一つです。
CTLの上昇は、体力やパフォーマンス向上の目安になります。
一日のトレーニング負荷はTSSで表します。
TSSが100の場合、1時間全力疾走した時の負荷になります。
CTLが100の場合、過去42日間で毎日1時間全力疾走したことを表します。
CTLの上昇速度
CTLは、体力を表す指標です。
1回のトレーニングで人は強くなりません。
トレーニングは、継続性と一貫性が重要です。
CTLは少しづつ高める必要があります。
CTLの急上昇は、オーバートレーニングを招きます。
CTLの適切な上昇スピードは、人によって異なります。
トレーニング時間、回復力、適応力が大きく影響します。
自分にあったCTLの上昇スピードは、経験から学ぶ以外にありません。
通常は5TSS/週が適正です。
7TSS以上に上昇した週は、過労に注意する必要があります。
CTLの適正値
CTLが上昇している時は、疲労を感じます。
トレーニングが嫌になるほどの疲労を感じる場合は、CTLの上昇スピードが高すぎる可能性があります。
CTLが上昇しているのに、疲労をあまり感じない場合は、トレーニング負荷とリカバリーのバランスが取れています。
CTLが高いほど、体力があると言えますが、永遠に上がり続けることはありません。
CTLは上下します。
CTLの適正値は、人によって異なります。
同じ人でも、時期やトレーニングの進捗状況により異なります。
トップ選手のCTLは175に達します。
健康を維持することが目的なら、CTL40でも十分です。
CTLを175にするには、週に25時間程度のトレーニングが必要です。
プロ選手以外は実現不可能であり、通常の人はオーバートレーニングになります。
アマチュアの場合、CTLが100程度あれば、高いパフォーマンスを発揮できます。
CTLとATLの関係
CTLと近い数値にATLがあります。
ATLは、短期トレーニング負荷と訳されます。
ATLは疲労度の指標です。
CTLが過去42日間なのに対して、ATLは過去1週間のTSSに基づてい算出されます。
TRAININGPEAKSでは「FATIGUE」と呼ばれます。
ATLがCTLより高い場合は、最近のトレーニング負荷が高い事を表します。
レース前のテーパリングや病気の時は、ATLはCTLより低くなります。
ATLがCTLより低いと、CTLは上昇しません。
CTLより高いATLを保つと、CTLが上昇します。
CTLとTSBの関係
CTLとATLから算出される数値がTSBです。
TSBはトレーニング・ストレス・バランスの略です。
TSBは体の調子を表す指標です。
CTLからATLを引いた数値がTSBです。
TSBが高いときは、体がフレッシュな状態です。
リカバリー中はトレーニング強度が下がるため、ATLが下降します。
CTLは急に下がらないので、CTLからATLを引いた数値であるTSBは上昇します。
連休などで連日トレーニングした場合は、ATLが上昇します。
CTLは急上昇しないので、CTLからATLを引いた数値であるTSBは下降します。
CTLでパフォーマンス管理を実践する方法
CTLでトレーニング量を管理
2年間のCTLとATLの変化をグラフにしたものです。
青の折れ線がCTLです。
赤の折れ線がATLです。
黄の折れ線がTSBです。
冬の基礎期
赤印の時期は、冬のベーストレーニングの時期です。
CTLが上昇し、体力が向上しています。
ATLはCTLより常に高い状態です。
TSBは低くなります。
体力はあるものの、体のフレッシュさはありません。
疲労が溜まっている状態です。
夏のレースシーズン
青印の時期はレースシーズンです。
冬に比べて、CTLが下降しています。
ATLはCTLより常に低い状態です。
TSBは高くなります。
グラフだけ見ると、体はフレッシュですが、体力が低下しているように見えます。
グラフから分かること
レースシーズンは、スプリント力やVO2MAXを上昇させる必要があります。
短時間高強度のトレーニングは、中身が充実していてもTSSが低くなります。
CTLは体力を表す指標ですが、パフォーマンス全てを表すことはできません。
レースシーズン中はCTLが70程度まで下がることもありますが、レース成績に影響はありませんでした。
1年目の冬に比べて、2年目の冬はCTLが低くなっています。
トレーニング量は2年目の冬の方が増加しています。
1年目の冬は、実際のFTPより設定FTP値が低すぎた可能性があります。
正しいFTP値でCTLを算出しないと、正確なデータを得られなくなります。
1年目と2年目のCTLは違いますが、上昇速度は似ています。
CTL上昇の傾斜がほぼ同じです。
CTLの「山」は1年目の方が大きいです。
1年目と2年目の青印のレースシーズンを比べてみます。
1年目より2年目はレースシーズン中にTSBが上昇しています。
その代わり、CTLは大きく下降しています。
レースシーズン中もCTLを高く保った方が良い人と、低い方が良い人がいます。
1年目と2年目のレース結果を振り返り、どちらが適しているか見極める必要があります。
1年目と2年目を比べることで、3年目のトレーニングやレースシーズンの過ごし方に活かすことができます。
データを蓄積させると、より良いトレーニング計画が立てられるようになります。
CTLは上下する
CTLは小刻みに上下します。
急上昇した後は、急下降するのが分かります。
ATLは更に激しく上下します。
CTLの急上昇は、免疫能力の低下を招き、長期的には燃え尽き症候群になります。
CTLは、穏やかな上昇が理想です。
燃え尽き症候群についてはこちらの記事を参考に
バーンアウト(燃え尽き症候群)を防げ ~いつまでも情熱的にレースするために~
3つのCTL活用方法
活用方法① ベーストレーニングの指標
冬のシーズオフは、有酸素能力を高める基礎期です。
基礎期の終わりにCTLが高い場合は、有酸素能力が向上したことを表します。
低負荷でのトレーニングボリュームが稼げると、CTLは大幅に上昇します。
基礎トレーニンの時期に、CTLは良い目標になります。
CTLを上げることをモチベーションにトレーニングに励むことができます。
ベーストレーニングについてはこちらの記事を参考に
冬のロードバイクベーストレーニング アプローチ2選 【量を重視:ハイボリュームトレーニング】VS【質を重視:スイートスポットベーストレーニング】
活用方法② リカバリーの指標
CTLが上昇すると、疲労感が増します。
CTLを自分の適正値に保つことで、オーバートレーニングを予防できます。
CTLを一年中高く保つことは不可能です。
CTLが150を超えると、病気やケガのリスクが高まります。
CTLが低すぎることも問題ですが、高すぎる事は更に大きな問題です。
CTLの急上昇にも注意します。
連休などで連日ロードバイクに乗り込むと、ATLが急上昇します。
必ずリカバリーを入れて、CTLの上昇が穏やかになるように調整します。
リカバリーについてはこちらの記事を参考に
ロードバイクトレーニングのアクティブリカバリー(積極的休養)は効果あり!?なし!?リカバリーライドの効果を検証!
活用方法③ レースに向けてのテーパリング
CTLは、過去42日間の加重平均です。
CTLは体力を表しますが、レースで発揮できるかは別問題です。
レース前は、CTLを少し下げる必要があります。
数日休んでも、CTLが急激に下がる事はありません。
レース1週間前は、トレーニング負荷を少し下げてもCTLは維持されます。
体力は維持したまま、筋肉はリフレッシュされます。
体力はあるのに、疲労感がない状態でレースに挑むことができます。
この時、ATLはCTLより低くなります。
「高い体力」を現実化させるには、フレッシュさが必要です。
レースで勝つのにCTLが高い必要はありません。
CTLが万能ではない理由
高いCTL≠レースに勝つ
高いCTLは、体力があることを表します。
しかし、レースに勝てるかは別問題です。
CTLは、トレーニングボリュームに大きく影響を受けます。
トレーニングボリュームを表す数値はTSSです。
中強度のロングライドを繰り返せば、TSSが高いのでCTLも上昇します。
スプリントトレーニングやVO2MAXインターバルは強度が高く、有効なトレーニングです。
しかし、TSSが低いため、CTLはあまり上昇しません。
効果的なトレーニングをしているにも関わらず、CTLが上昇しなくなります。
短時間高強度のトレーニングをしてレースに対応できる人より、ロングライドを繰り返す人の方がCTLが高くなります。
パフォーマンスが向上し、レースに勝利するのは前者です。
ロードレースで勝利するには、有酸素能力に加えて、短時間高強度のトレーニングが必須です。
「CTLが高い≠レースに勝つ」と言えます。
VO2MAXとレースの関係についてはこちらの記事を参考に
一定レベル以上はCTLとパフォーマンスが乖離する
ある一定のレベルから、CTLと実際のパフォーマンスは乖離します。
CTLの上昇が止まっても、パフォーマンスが向上する状態になります。
スプリント力やVO2MAXの向上は、CTLで表すことができません。
スプリント力やVO2MAXの向上を表すのは、10秒間や3分間の平均パワーです。
基礎期が終わり、有酸素能力が十分に高まったら、大きな負荷に耐えられるトレーニングを始める時期です。
CTLのみに固執すると、パフォーマンスが向上しにくくなります。
正しいFTPでトレーニング
体感疲労に比べてCTLが高い時は、FTPを見直す必要があります。
設定したFTPと実際のFTPに差があると、正確なCTLが算出されません。
設定FTPを上げると、同じトレーニングでもCTLが上昇しなくなります。
人によっては、心理的に大きな負担になります。
FTPの上昇が僅かな場合は、シーズンオフに入るまでFTP値を変えない方法もあります。
CTLの上昇がトレーニングのモチベーションになっている人は、この方法を選択しても良いかも知れません。
FTPテストについてはこちらの記事を参考に
ZWIFT FTPテスト全4種類徹底解説 20分テスト・ランプテスト ベストなFTPテスト方法を紹介
ロードバイクの能力を表す絶対的な指標はない
CTLはトレーニングの量を表し、体力の指標になります。
ロードバイクにおける能力の全てを表す訳ではありません。
レースに勝利するには、10秒間や3分間、20分間の最大パワーを上げる必要があります。
戦略やバイクコントロールテクニックも重要です。
一つの数値だけに固執してトレーニングするのは効果的ではありません。
それぞれの数値が持つ意味を理解し、活用することが大切です。
ZWIFTの専門用語についてはこちらの記事を参考に
FITNESSでZWIFTのFTP・MAP・VO2MAX・Peak Powerを見る方法