【ロードバイク】TSSが完全に理解できる計算方法とトレーニングへのTSS活用方法・4つの限界
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目次
トレーニングのボリュームを数値化するTSSとは
TSS=トレーニングの頑張りを示す指標
ロードバイクトレーニングの体への負荷は、様々な要因で決まります。
負荷の要因は、トレーニング強度やトレーニング時間、トレーニング頻度などです。
トレーニング中のパワーデータを基に、トレーニング強度を示すことができます。
その指標の一つが、トレーニング・ストレス・スコア(TSS)です。
TSSは、トレーニングのボリュームを数値化することができます。
TSSは、トレーニング量を継続して計測するために使われます。
TSSを使えば、疲労の蓄積が数値化できます。
重要なレースに向けてピーキングすることも可能です。
ピーキングについてはこちらの記事を参考に
【ロードバイクのテーパリング】メカニズムと実践法を知ってレースで最高のパフォーマンスを発揮する方法
TSSの算出方法
TSSはトレーニング時間と標準化パワー(NP)、トレーニング強度(IF)、FTPによって決まります。
それぞれ専門的な用語ですが、理解することでトレーニングの質を高めることができます。
簡単にすると、下の表の通りになります。
FTP | 1時間に出せる最大の平均パワー |
トレーニング強度(IF) | トレーニングの頑張り強度(1時間のトレーニングで0.8以上だとかなりハード) |
標準化パワー(NP) | 下りや信号ストップなどを除外した平均パワー |
標準化パワーNPについてはこちらの記事を参考に
【ロードバイクトレーニング】標準化パワー・NPの活用方法と注意点!レース解析の活用方法!スプリントトレーニングには使えない!?
FTPについてはこちらの記事を参考に
TSS=【(持続秒数×標準化パワーNP×強度係数IF)/(FTP×3600)】×100
TSSの計算には、NP、IF、FTPなどの数値が使われます。
NP、IFについてはこちらの記事を参考に
ロードバイクトレーニング必須単語 NPの活用方法と注意点!レース解析の活用方法!スプリントトレーニングには使えない!?
FTPについてはこちらの記事を参考に
ZWIFT FTPテスト全4種類徹底解説 20分テスト・ランプテスト ベストなFTPテスト方法を紹介
TSSと「調子」の関係
トレーニング強度が上がれば、トレーニング時間は短くなります。
逆にトレーニング時間が長くなれば、トレーニング強度は下がります。
ロードバイクトレーニングで疲労度や調子を表す指標にCTL、ATL、TSBがあります。
CTL、ATL、TSBはTSSを基に計算しています。
毎日のトレーニングのTSSの蓄積がCTL、ATL、TSBとなります。
TSSは1回のトレーニング毎の疲労を表します。
ロードバイクは1回のトレーニングで速くなる訳ではありません。
CTL、ATL、TSBは長期的なトレーニング強度を表します。
トレーニングの目標は、CTLを高く保つ事にあります。
CTLが高くキープ出来ている期間に、FTPを更新できる可能性が高くなります。
CTL | 長期的な疲労度 |
ATL | 短期的な疲労度 |
TSB | 調子 |
CTLやATLは長期的な視点で、どれ位トレーニングをしているかの指標になります。
標準程度にトレーニングしているアマチュア選手のCTLは50程度です。
アマチュア選手のトップレベルはCTLが100を超えます。
プロ選手はCTLが120から160程度になります。
これは、過去42日間の毎日のTSSが120を超えることを意味します。
CTLが100の場合は過去42日間、毎日1時間全力でトレーニングしたのと同等の疲労になります。
CTLやATL、TSBについてはこちらの記事を参考に
CTL・ATL・TSBって何!?パワーメーターでパフォーマンス調整!
TSSの目安
FTP強度で1時間トレーニングすると、TSSは100になります。
TSSが200のトレーニングをした場合は、2時間の全力走をした時と同じ疲労度と計算されます。
TSSと体へのダメージは下の表の通りです。
TSS | トレーニング強度 | 体へのダメージ |
~150 | 低い | 翌日に完全回復 |
150~300 | 中程度 | 翌々日に回復 |
300~450 | 高い | 回復に数日かかる |
450~ | かなり高い | 数日間は疲労が残る |
トレーニング後にTSSを確認することで、リカバリーに必要な日数が分かります。
リカバリーについてはこちらの記事を参考に
ロードバイクのリカバリー戦略 回復食のタイミング・量・注意点
TSSが唯一絶対的な指標ではない理由
TSSは負荷を示す唯一の指標ではない
ロングライドと強度の高いインターバルが、同じTSSになる時があります。
2つのトレーニングが体に与える影響は、同じではありません。
FTP走を10分間×2回した場合と、20分間した場合はTSSが同じ値になります。
しかし、体への負荷は20分間の方が圧倒的に大きいです。
TSSは、体への影響を相対的に表したものです。
TSSは、体への負荷を表す唯一で絶対的な指標ではありません。
TSSがトレーニング負荷の全てを数値化できない理由
TSSの計算方法をもう一度見てみましょう。
TSSの計算式
TSS=【(持続秒数×標準化パワーNP×強度係数IF)/(FTP×3600)】×100
計算式の中に、時間と強度が入っているのが分かります。
ロングライドでは時間が長くなりますが、強度は低くなります。
インターバルトレーニングでは、時間が短くなりますが強度は高くなります。
インターバルとロングライドはTSSは同じでも効果は全然違うよ
TSSは同じでも、内容は全く違います。
TSSが同じだと、異なるトレーニングが同じように感じてしまうので注意が必要です。
体に与える影響も違います。
一週間のTSSを基準にトレーニングしている人は注意が必要です。各トレーニングのIFやインターバルの合計時間、各パワーゾーンでの滞在時間を考慮する必要があります。
トレーニング前半のTSSと後半のTSS
TSSは時間と強度を用いて算出します。
蓄積した疲労を考慮することはできません。
長時間に及ぶトレーニングの後半は、疲労が蓄積しています。
体にかかる負荷はトレーニング後半の方が大きいのに、TSSはトレーニング前半の方が高い場合があります。
トレーニング後半のTSSが低いからと言って、負荷が少ない訳ではありません。
良いTSS・悪いTSSとは
客観的に良いTSSは存在しない
TSSに良い、悪いはありません。
TSSが良いか悪いかを判断するのは、トレーニング経験などに基づく主観的なものです。
トレーニング初心者は一週間でTSSが250かも知れません。
経験を積んだ選手は、一日でTSS250を稼ぐこともあります。
1回のトレーニングでどれくらいのTSSが適正かを判断するには、非常に難しいです。
TSSがどのように計算されるかを理解し、自分に合った数値を目指すことが重要です。
TSSだけを目標にしない
TSSは、トレーニングボリュームを数値できる優れた指標です。
しかし、TSSのみを目標にすると大切なことを見落とすことになります。
TSSはトレーニング効果の一部を数値しているだけです。
トレーニングの質を数値化している訳ではありません。
TSSの限界が現れる4つのシチュエーション
シチュエーション① クリテリウムレース
パワーが急激に上昇・下降する状況では、TSSは体感より低くなります。
TSSは標準化パワーNPを計算に入れています。
標準化パワーNPは、30秒以上継続したパワー値を計算します。
クリテリウムレースはパワーが激しく上下します。数秒単位で激しくパワーが変動する場面では、標準化パワーNPが低くなります。
標準化パワーNPが低く見積もられることで、TSSも低くなります。
クリテリウムレースで記録されたTSSが低くても、体は回復を必要としています。
シチュエーション② 数日間ハードな練習が続く
TSSを基準に数日間ハードなトレーニングをする時は、注意が必要です。
初日のTSSと3日目のTSSが同じでも、体にかかる負荷は同じではありません。
疲労が蓄積しているためです。
回復に必要な時間も同じではありません。
合宿初日と最終日は、TSSが同じでも負荷は全く異なります。
シチュエーション③ インターバルトレーニング
インターバルトレーニングの強度をTSSで判断するには、注意が必要です。
スイートスポット強度で20分間×2回のインターバルを10分間のレストでした場合と、40分間のスイートスポット走のTSSは同じです。
体への負荷は、40分間のスイートスポット走がはるかに大きくなります。スイートスポットトレーニングについてはこちらの記事を参考にスイートスポットトレーニング 時間効率重視でロードバイクトレーニング!向いている人は?やり方は?時間は?強度は?ZWIFTワークアウトは?疑問を全て解決!
インターバルの時間が長いほど、体にかかる負荷は大きくなります。
TSSは、トレーニング時間と強度の関係性を考慮に入れる事ができません。
トレーニングの全体像を表すことは難しいです。
インターバル時間が長ければ負荷は大きくなるよ
シチュエーション④ FTPが上昇した時
TSSは、FTPが計算式に入っています。
FTPが上がったのに同じ強度のトレーニングをした場合は、TSSは下降します。
FTPが上がった場合は、トレーニング強度を上げる必要があります。
TSSがどのように計算されているかを理解してトレーニングする必要があります。
FTPが上がったら強度を修正しないとね
TSSが有効活用できるシチュエーション
同じ強度のトレーニングを繰り返す時期
冬の走り込みの時期など、同じ内容のトレーニングを繰り返すシチュエーションでTSSは良い指標になります。
1週間のTSSの合計を比較することができます。オーバートレーニングやアンダートレーニングを防ぐことができます。1年前や2年前と同時期のトレーニングボリュームを簡単に比較することもできます。データが蓄積するほど、トレーニングを効果的に進めることができるようになります。
疲労管理
数か月や数年単位の調子の良さや疲労度を管理するのに、TSSは優れた指標となります。
毎日のTSSを基に、トレーニング・ストレス・バランス(TSB)が計算されます。
毎回のトレーニングの疲労度をTSSのみで判断するには注意が必要です。
数か月、数年単位では、疲労度のずれも均衡化される可能性が高くなります。
トレーニング・ストレス・スコア TSSの長所と注意点 まとめ
トレーニング・ストレス・スコア TSSは、ロードバイクトレーニングの強度を示す指標の一つです。
TSSは、トレーニングストレスを表す唯一で絶対的な数値ではありません。
トレーニングの負荷は、総合的に判断する必要があります。
TSSは、トレーニング計画を立てたり進捗状況を確認するのに必要な数値です。
しかしTSSだけをトレーニング目標にするべきではありません。
TSSの計算式を理解してトレーニングに活用する必要があります。
大切なのは、トレーニングが体に与える影響を考える事です。
総合的に考える事が大切なんだね