一定ペースでロードバイクを漕いでも心拍数が上り続ける「心拍ドリフト」の抑制方法とトレーニングへの活用

Contents

いつの間にか心拍数が上昇する現象 心拍ドリフトとは

一定のペースにも関わらず心拍数が上昇する

心拍ドリフトとは、一定のペースを保っているにも関わらず心拍数が上昇する現象です。
120Wで1時間ペダルを回した場合、最初は130bpmだったのに、1時間後は140bpmに心拍数が上がることがあります。
この現象が心拍ドリフトです。

心拍ドリフトは、ロードバイクだけではなくマラソンなどの持久系スポーツ全般で見られる現象です。

マラソンでは、ペースが一定にも関わらずゴール前は15%から20%も心拍数が上がることもあります。

運動強度を上げれば、心拍数が上がります。

運動強度を下げれば、心拍数が下がります。

心拍数が上がりすぎた場合は、運動強度を下げれば心拍数は下がります。

心拍ドリフトが起こると、この原則が当てはまらなくなります。

運動強を上げていないのに、心拍数が上がり続けます。

問題は、心拍数を下げるために運動強度を下げるべきかどうかです。

心拍数を基準にトレーニングする場合、時間が経つにつれてパワーを落とす必要があります。
パワーを基準にトレーニングする場合、時間が経つにつれて目標の心拍数より高くなります。
心拍数を基準にするか、パワーを基準にするかが問題です。

心拍ドリフトは必ず起こる

体を動かす限り、心拍ドリフトは必ず起きます。

人は、同じ心拍数で永遠に動き続けることはできません。
一定のペースを長時間維持すると、疲労感が増します。
心拍数も上昇します。

但し、心拍ドリフトで極限まで心拍数が上昇することはありません。

長時間維持できるパワーなら、最大心拍数まで上昇することはあり得ません。

パワートレーニングについてはこちらの記事を参考に

【ロードバイク】パワートレーニング・FTPの犯しがちな5つの過ち

なぜ心拍ドリフトが起こるのか

心拍ドリフトが起こる原因

心拍ドリフトの原因は、諸説あります。
心臓の1回拍出量が低下するのが、大きな要因です。
長時間トレーニングすると、心臓の1回の拍動で送り込める血液量が減少します。

その結果、心拍数が増加します。
体内の水分量の減少も大きな要因です。
トレーニング中は、体温が上昇します。
体温を下げるために、皮膚表面の血流量が増加します。
身体全体の循環血液量が増加するため、血圧が低下します。
下がった血圧を上げるために、多くの血液を送る必要が出ます。
そのため、心拍数が増加します。

脱水により血液の粘性があがり、循環しにくくなるのも要因の一つです。
実際に、冬よりも夏の方が心拍ドリフトが顕著になります。

脱水についてはこちらの記事を参考に

ロードバイク補給 水分・カロリーの適正量を知る方法

有酸素能力が低い方が心拍ドリフトが起きやすくなる理由

心拍ドリフトは、血液の循環器系が関与する現象です。

血液の循環量は主に心拍出量で決まります。

心拍出量は1回拍出量と心拍数の積で求められます。

 心拍出量(mL/分)=1回拍出量(mL)×心拍数(回/分) 

AさんとBさんがいたとします。

Aさんの1回拍出量はBさんより多いです。

Aさんの1回拍出量が70ml/分に対して、Bさんの1回拍出量は61ml/分です。

毎分10500mlの血液を送り出す場合、Aさんの心拍数は150bpmなのに対して、Bさんは170bpm必要です。

同じ血液量を循環させる場合、AさんはBさんより心拍数を少なくしてエネルギーを節約できます。

心筋の劣ったサイクリストは、心拍出量を維持するために心拍数を増やす必要があります。

従って、心拍ドリフトが起きやすくなります。

心拍ドリフトの抑制方法

心拍ドリフトは生理現象

心拍ドリフトは体温上昇を防ぐための体の機能の一つと考えられます。

一定強度以上の運動を続けると、必ず心拍数は上昇し続けます。

心拍ドリフトは必ず起こる現象であり、完全になくす必要はありません。

心拍ドリフトを抑える方法

水分補給を適正に行うことで、心拍数の上昇をある程度抑制できます。

心拍ドリフトが激しい場合は、有酸素能力が不足している可能性が高いです。

1時間程度トレーニングしても心拍数の上昇率が7%未満の領域で長時間トレーニングすることが有効です。

有酸素能力は、ロードバイクなどの持久系種目で最も重要です。

有酸素トレーニングについてはこちらの記事を参考に

ロードレース必勝法!有酸素運動能力トレーニング!!

心拍ドリフトに合わせてパワーを下げるべきか否か

心拍数・パワーを基準にした場合のそれぞれの問題点

心拍数を基準に長時間トレーニングすると、後半は心拍ドリフトが起こります。
心拍数が徐々に上がるため、心拍数を維持するにはパワーを下げる必要があります。
逆に、パワーを基準に長時間トレーニングすると、後半は心拍数が上がります。
Z2上限でトレーニングするはずなのに、Z3のトレーニングになってしまいます。
心拍数の上昇に合わせて後半にパワーを落とすべきか否かは意見が分かれており、正解はありません。

ゾーン設定についてはこちらの記事を参考に

【ロードバイク】パワー・心拍・RPEを使ったゾーン設定とトレーニングへの活用 

血中乳酸濃度は変化しない→パワーを落とす必要はない

参考になるのは、心拍ドリフトが起きても血中乳酸濃度が上昇しないということです。
心拍ドリフトが起きても血中乳酸濃度は上昇しないことを考えると、パワーを落とす必要性は少ないと考えられます。
心拍ドリフトが起きても体内で順調に乳酸がエネルギーに変換され、有酸素運動が継続できているためです。

心拍ドリフトは、体温を維持するための生理現象と捉えることもできます。
ターゲットの心拍数よりかなり高くなる場合は、パワーを下げる必要があります。

血中乳酸濃度についてはこちらの記事を参考に

乳酸が溜まりにくい体になれば、ロードレースに勝てる理由と乳酸閾値上昇のためのトレーニング方法

エリート選手は心拍ドリフトが小さい

同じ時間トレーニングしても、心拍ドリフトの割合は人によって異なります。
同じ人でも、外気温や体調によって異なります。
有酸素能力の高い人ほど、心拍ドリフトが起きにくくなります。
水分補給も重要です。
上手く水分補給できる人は、有酸素能力が同じでも心拍ドリフトが起きにくくなります。
後述する心拍ドリフトのテストを定期的に行うと、有酸素能力の上下を測定できます。

有酸素能力についてはこちらの記事を参考に

【なぜZWIFTならダイエットが成功するのか】その理由と最適な有酸素ワークアウト5選

マラソン選手を対象に調査した結果では、タイムが速い選手ほど心拍ドリフトの程度が低かったです。

有酸素能力が高いほど、心拍ドリフトが起きにくい結果となりました。

心拍ドリフトをトレーニングに活用する

Z2上限心拍数を正確に算出する

心拍ドリフトを使って、Z2上限の心拍数を測定することができます。
Z2上限は、有酸素性作業閾値とも呼ばれます。
英語では、Aerobic Threshold(AeT)と呼ばれます。
AeTはLT(血中乳酸閾値)よりかなり低い強度です。
AeTは有酸素能力を向上させるために非常に有効です。
この強度で長時間トレーニングすると、ロードバイクの基礎を築くことができます。
オフシーズンは勿論、年間を通して最も時間をかけるべきゾーンです。
心拍ドリフトを使ってテストすると、Z2上限の心拍数を算出できます。

心拍ドリフトのテスト方法

テストにかかる時間は75分です。
上りや下りのない、平坦なコースでテストします。
上りや下りは、パワーが上下します。
上りや下りは、心拍ドリフト以外の要因で心拍数が上下しやすくなります。
無風であることも大切です。
ZWIFTで行う場合は、フラットコースを選択します。
正確に心拍数を測れるモニターを装着します。
腕時計型は誤差のある製品があるので、注意が必要です。

パワーメーターも必要です。
心拍ドリフトは、気温の影響を大きく受けます。
真夏の高温期は、心拍ドリフトが起きやすくなります。

FTPテストについてはこちらの記事を参考に

ZWIFT FTPテスト全4種類徹底解説 20分テスト・ランプテスト ベストなFTPテスト方法を紹介

目標心拍数

目標心拍数はZ2上限です。
多くの場合、最大心拍数の70%です。
最大心拍数が200bpmの人は、140bpmが目標心拍数です。

テストの手順

テストの前はウォーミングアップをします。
ウォーミングアップの目的は、目標心拍数まで上げることです。
15分程度かけて、ゆっくり心拍数を上げます。
トレーニングの最初は、心拍数が急激に上がります。
これは、交感神経の作用によるものです。
心拍ドリフトとは別の現象です。
ウォーミングアップが終わったら、テストを開始します。
最初の30分は、心拍数を可能な限り目標に近づけます。
30分経ったら、30分間の平均パワーを記録します。
後半の30分も同じ心拍数を維持します。
通常は、心拍数を維持するためにパワーを落とす必要があります。
30分経ったら、後半の平均パワーを記録します。

テスト結果の計算方法

前半の30分と後半の30分のパワーを比較します。
前半で210W、後半で200Wだった場合
200÷210=0.95
前半と後半の比率は95%になります。

100%以上
同じ心拍数で後半の方が高いパワーが出ています。
目標心拍数の設定が間違っている可能性が高いです。
Z2の上限よりも低い心拍数でテストした可能性があります。
もう一度、心拍ゾーンを設定し直しましょう。

100%から96.5%
脂肪をエネルギーに変換してトレーニングできています。
しかし、テストで使った心拍数はZ2上限より低い可能性が高いです。
心拍ゾーンの設定をもう少し上げる必要があります。

96.5%から95%
テストで使用した心拍数をZ2上限として使うことができます。
この心拍数でトレーニングすれば、有酸素能力が向上します。
トレーニングを続けると、同じ心拍数でより速く、遠くへ行くことができるようになります。
数か月後に同じテストをすることで、より正確なゾーン設定ができます。

95%以下
目標心拍数の設定が高すぎます。
目標心拍数を下げて、再度テストします。
3.5%から5%の範囲に収まるのがZ2上限の心拍数です。

テスト結果の活用方法

テストでは、有酸素能力を引き上げるのに最も有効なパワーであるZ2上限が分かります。

数か月後に同じテストをすることで、有酸素能力が向上しているかどうかが分かります。

有酸素能力が向上している場合、同じ心拍数で高いパワーが出せるはずです。

心拍ドリフトの程度が低くなる可能性もあります。

FTPテストについてはこちらの記事を参考に

【ロードバイク】初めてのFTPテストで好成績を出すコツと失敗しない方法

Follow me!

<応援クリックお願いします!> ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です