ロードバイクのスプリント力に直結する「無酸素パワー」への大きな誤解
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無酸素パワーとは
ロードバイクで短時間に爆発的なパワーを発揮するスプリントは、無酸素パワーや神経筋パワーと呼ばれます。
無酸素パワーや神経筋パワーは、30秒間の平均パワーで測定します。
多くの人がFTPの150%以上の値になります。
速筋の割合が多く、スプリント力に優れる人は更に高い値になります。
無酸素パワーを使う場面は、ロードレースやトレーニングのごく一部です。
時間は短いものの、レースの勝敗を決する重要な領域です。
ロードレースについてはこちらの記事を参考に
ZWIFT(ズイフト) レースに勝つための5つのパワーアップアイテム 効果的な使い方とミステイク
「無酸素パワー」は概念
FTP150%以上は、無酸素パワーと呼ばれます。
酸素を使わずにエネルギーを生み出す割合が高いためです。
体内が本当に無酸素状態になることは、あり得ません。
スプリントでは糖分解が高まり、乳酸濃度が増加します。
乳酸が多くできる状態が無酸素状態ではありません。
10秒程度のスプリントでも、多くの酸素が利用されています。
スプリント中でも心臓は動き続けます。
心臓が動く限り、筋肉に酸素が供給されます。
筋肉中の酸素を使い切る事はあり得ません。
従って、体内が無酸素状態になることはあり得ません。
無酸素パワーとは抽象的な意味であり、概念です。
有酸素運動がゼロになることはありません。
FTPについてはこちらの記事を参考に
【ロードバイク】パワートレーニング・FTPの犯しがちな5つの過ち
無酸素運動中の有酸素運動の割合
スプリントは、厳密な意味での無酸素運動ではありません。
1分程度の全力疾走で、酸素利用によるエネルギー供給は50%以上です。
残りの50%は酸素を利用しないエネルギー供給です。
運動時間における有酸素と無酸素の比率は次の通りです。
運動時間 | 有酸素 | 無酸素(クレアチンリン酸利用) | 無酸素(乳酸産生) |
10秒 | 20% | 40% | 40% |
20秒 | 33% | 33% | 33% |
1分 | 50% | 25% | 25% |
10秒の短いスプリントでも、エネルギー供給の20%は有酸素です。
1分間の全力疾走では、エネルギー供給の半分を有酸素に依存しています。
どんなに短い運動でも有酸素が関わっています。
有酸素トレーニングについてはこちらの記事を参考に
無酸素パワーで脚が焼け付く理由
スプリントで疲労する原因の一つが、リン酸の蓄積です。
リン酸は、ATPやクレアチンリン酸の分解で発生します。
リン酸は、筋収縮を阻害します。
ATPは、体内に少量しか貯めることができません。
クレアチンリン酸は、ATPの4倍から5倍貯めることができます。
酸素に換算すると1.5リットル程度に相当します。
クレアチンリン酸は、酸素なしでエネルギーに変換されます。
クレアチンリン酸が枯渇すると、リン酸濃度が上昇します。
1分間の運動の最初の10秒は、クレアチンリン酸の利用が多いです。
10秒以降は、クレアチンリン酸の利用率が下がります。
スプリントトレーニングについてはこちらの記事を参考に
スプリント時間が長くなるにつれて有酸素の割合が増加する
乳酸の産生や酸素摂取は、スプリントのスタート直後から始まります。
クレアチンリン酸の利用率の減少に伴って、有酸素の割合が増加します。
1分間の運動の最終盤は、80%程度が有酸素になります。
スプリントは無酸素運動なので乳酸が溜まり、疲労するという考え方は誤りです。
筋肉内での酸素消費は、スプリントを含む全ての運動で起こります。
エネルギー産生の多くは、ミトコンドリアによるATP産生です。
スプリントで起きる筋肉の疲労は、リン酸の蓄積やクレアチンリン酸の分解、筋温の上昇など、様々な要因があります。
無酸素パワーを上げる方法
1分間の平均速度を上げるには、トップスピードを上げる必要があります。
スプリント力の向上は、乳酸との闘いではありません。
乳酸耐性を向上させることが、スプリント力のアップには直結しません。
乳酸耐性を向上させるためのインターバルトレーニングは、スプリント力向上には不向きです。
最大パワーを向上させる必要があります。
最大パワーを向上させ、そのパワーを維持する必要があります。
ロードバイクのトレーニングについてはこちらの記事を参考に
【ロードバイク】パワートレーニング・FTPの犯しがちな5つの過ち