乳酸閾値(LT)トレーニングを冬にやるべき理由と方法
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目次
冬にするべきロードバイクトレーニング
冬はロードバイクトレーニングで、有酸素能力を向上させる絶好の時期です。
シーズンオフに有酸素能力を最大限に引き上げることで、より強い身体になれます。
レースシーズンで、見違えるように速くなります。
有酸素能力の目安は乳酸閾値(LT)です。
LTが上がれば、有酸素能力が向上していると言えます。
パワートレーニングの専門用語についてはこちらの記事を参考に。
有酸素能力の指標「乳酸閾値LT」
LT=血中乳酸濃度が急上昇し始めるトレーニング強度
乳酸閾値(LT)とは、血中乳酸濃度が急上昇し始めるトレーニング強度のことです。
「疲労=乳酸が溜まる」というイメージがあります。
現在では、乳酸が疲労の原因物質ではないことが分かってきました。
乳酸はエネルギー源となります。
糖を分解すると乳酸が産生されます。
速筋で産生された乳酸は、遅筋や心筋でエネルギーになります。
乳酸が遅筋などで処理仕切れない運動強度で、人は疲労を感じ始めます。
しかし、疲労の原因は乳酸ではありません。
疲労の原因は、筋グリコーゲンの枯渇、筋温の上昇、脱水、血中カリウム濃度の上昇など様々です。
血中乳酸濃度の上昇は、疲労の目安となります。
有酸素能力の高い人は脂肪をエネルギー源に使う
糖質をエネルギーとして使う運動強度では、疲労感が増します。
脂肪をエネルギーに使う強度では、長時間運動することができます。
糖質はミトコンドリアでエネルギーになります。
糖質をミトコンドリアで分解する時は酸素を使います。
ミトコンドリアの数は有限です。
更に多くの糖を分解する時は細胞質で処理されます。
糖を細胞質で分解する時は酸素が使われません。
有酸素能力の高い人は、同じ運動強度でもミトコンドリアで糖を分解することができます。
有酸素トレーニングについてはこちらの記事を参考に
ダイエットに最適な有酸素系ZWIFTワークアウト5選ー1時間オーバー編ー
運動強度の低いトレーニングでは、主に脂肪がエネルギー源として使われます。
運動強度が高いと、糖質を使う割合が増えます。
運動強度が高くなると、疲労を感じます。
糖質が使われる過程で、多くの乳酸が生まれます。
多くの乳酸が生まれ始める強度がLT(乳酸閾値)です。
LTを引き上げることで、高いパワーでも脂肪をエネルギー源にできる身体になれます。
乳酸閾値LTを向上させるべき理由
LT向上で起こる体の変化
AさんとBさんがいます。
シーズンオフに入るまで、AさんとBさんは同じくらいの走力を持ったライバルでした。
Aさんは基礎トレーニングの重要性を理解し、冬の間LTを上げるトレーニンだけ行いました。
Bさんはスプリント力が課題だと感じていました。
レース終盤で勝てるように、スプリント力とVo2maxを上げる事に集中しました。
冬の間、強度の高いトレーニングを中心にしました。
春になり、一緒に練習する機会がありました。
二人は同じスピードで走りました。
Aさんは有酸素能力が高いので、主に脂肪をエネルギー源して走っています。
Bさんは強度の高いトレーニングばかりしていたので、「糖質消費型」の体になっています。
主に糖質を分解し、エネルギーに変えながら走ります。
2時間後、脂肪を中心に消費したAさんはまだまだ元気いっぱいです。
今から何本でも、もがけそうです。
Bさんは糖質を分解したため筋グリコーゲンが枯渇します。
エネルギーが供給されず、疲労感でいっぱいです。
とても今からゴールスプリントに挑むことはできません。
Aさんは、最初のレースまでにスプリント力を取り戻すことができます。
Bさんが有酸素能力を上げるには、時間が足りません。
冬の過ごし方でAさんとBさんは大きな差がついてしまいました。
低い強度で長時間トレーニングした方が、結果的には速くなります。
VO2MAXなどの高強度パワーは、1ヶ月程度で前シーズンのレベルまで戻せます。
LTを上げることは、体内に少ししか貯蔵することができない糖を節約できます。
糖は肝臓や筋肉に貯蔵されています。
肝臓には500㎉、筋肉には1500㎉の糖質を貯蔵できます。
糖は脂肪よりエネルギーの変換しやすいですが、すぐに枯渇してしまいます。
LTの高い人は、大量にある脂肪をエネルギー源にできます。
レースの重要局面で、ジェット燃料である糖質を燃やしてスパートをかけられるようになるのです。
低強度トレーニングについてはこちらの記事を参考に
冬のロードバイク 低強度・長時間VS高強度・短時間 どちらがベスト?
冬に乳酸閾値(LT)を上げる理由
LT向上トレーニングは時間が必要
冬に行う理由は、「LTを上げるにはLTを上げるトレーニングだけする必要がある」からです。
レースシーズンは、様々な種類のトレーニングをする必要があります。
スプリント力、Vo2maxを上げる、持久力を上げるなどです。
シーズンオフは、これらのトレーニングは必要ありません。
スプリント力やVO2MAXを上げる練習は、シーズン開幕前でも間に合います。
時間をかけてLTを上げられるのは、冬だけです。
乳酸閾値(LT)を上げる方法
FTPを測定
最初に、自分のFTPを把握する必要があります。
FTPとは「60分間出せるパワー」のことです。
60分間も限界に挑戦するのは困難です。
一部のトップアスリートだけが60分間限界まで追い込むことができます。
ZWIFTには「FTPテスト」という機能があります。
これはZWIFT上で20分間やビルドアップ走をして、模擬的にFTPを測定するものです。
4種類のテストがあります。
短時間で終わりますが、キツイです。
ZWIFのFTPテストについてはこちらの記事を参考に
ZWIFT FTPテスト全4種類徹底解説
屋外を20分間走行して、平均パワーに0.95をかけても算出できます。
体調の良い時に実施して、自分自身のFTPを把握しましょう。
LTを計算
FTPが分ったら、次はLTを計算します。
LTはFTPの55%から75%です。
FTPが220wなら120wから165wです。
120wから165wは随分と幅が広い気がしますが、これは人によって基礎的な有酸素能力に違いがあるためです。
有酸素能力の高い人は、LTも高くなります。
有酸素能力が低いと、LTも低くなります。
毎年基礎トレーニングをしている人は、有酸素能力が高い可能性があります。
有酸素能力向上トレーニングを怠っていた人は、低いかもしれません。
自分の有酸素能力が高いのか、低いのかを見極める方法があります。
LT上限で2時間から3時間走ってみましょう。
もし脚が焼け付く感覚がなく、呼吸も乱れることなく走りきれたなら、有酸素能力は高いと言えます。
逆に30分程度しかこの強度で走れない場合は、有酸素能力を上げる余地があります。
自分のLTを下方修正してトレーニングしましょう。
LTトレーニング中はFTPが落ちる
LT中心のトレーニングをする冬の期間は、FTPは落ちます。
Vo2max付近のトレーニングがFTPを押し上げるからです。
自分が弱くなったように感じるかも知れません。
FTPが落ちたからといって、LTを上げるトレーニングを中断してはいけません。
長い目で見れば、LTの上昇こそがFTPを上げる近道です。
「ゆっくり走れば速くなる」と唱えながらじっくりとトレーニングしましょう。
LT向上のためのトレーニングする場合は、トレーニング期間分けます。
「前期」「中期」「後期」に分けます。
LT上昇トレーニングに取り組む期間は、人によって違います。
前期:中期:後期=6:4:4に分けます。
12月から2月まで取り組む場合は、前期が6週間、中期が4週間、後期が4週間になります。
前期では楽なケイデンスで、2時間程度LTで走行しましょう。
次の日に疲れが残らない程度の強度に抑えます。
実走ではパワーが上下することは避けられません。
走行時間の9割以上はLTになることを意識しましょう。
強度の高い時間を極力少なくします。
下りでゼロパワーになることは避けます。
中期では、軽め~中程度の強度でトレーニングします。
ロングライド中に長い登りを取り入れるのも良いトレーニングです。
ケイデンスを80rpmにして、LTで10分から60分かけて登れる坂で行います。
上半身をリラックスさせて呼吸を整えましょう。
後期では、適度にハードな強度でトレーニングする時間を伸ばします。
後期では、FTPの70%から90%での強度でトレーニングする時間を作ります。
10分から60分程度が理想です。
全ての時期に共通する重要なことは、LTでの走行時間を減らさないことです。
後期になると有酸素能力が向上し、強くなった感覚があると思います。
基礎期はLTを上げる時期です。
本格的なトレーニングはもう少し後に残しておきましょう。