ロードバイクのサイコンやウェアラブルデバイスに表示される消費カロリーの精度とトレーニングへの使い方
Contents
目次
ウェアラブルデバイスやサイコンはどのようにして消費カロリーを測定しているか
ロードバイクの消費カロリーを知りたい理由
ロードバイクに乗った時のの消費カロリーを知りたい理由は、人によって異なります。
トレーニングの満足感を得るための人も居ます。
ロードバイクで消費したカロリーをトレーニング後に補給するため、という人も居ます。
レース中の補給量を決めるために、消費カロリーを知る必要がある場合もあります。
消費カロリーの意味を正しく理解し、トレーニングに活かすことが重要です。
補給食についてはこちらの記事を参考に
ウェアラブルデバイスの消費カロリーは推定値
1カロリーは、1グラムの水を1℃上げるのに必要なエネルギーです。
食べ物に含まれるカロリーは、キロカロリー(㎉)と表されます。
サイクルコンピューターを含むウェアラブルデバイスは、心拍数や睡眠の質など、様々なデータが表示できます。
消費カロリーは、ほぼ全てのサイコンやウェアラブルデバイスに付いている機能です。
ウェアラブルデバイスの歩数や心拍数は、誤差が数%から25%とされています。
歩数は、ウェアラブルデバイスを利き手につけるかどうかといった違いでも、大きな誤差が生じます。
心拍数は、トレーニング強度が上がるほど、誤差が大きくなります。
ウェアラブルデバイスの数値は、パワーや速度を除きほぼ全てが推定値です。
特に、体に関する数値は推定の場合が多いです。
メーカー独自のアルゴリズムを使って、数値を推定しています。
ウェアラブルデバイスの消費カロリー測定方法
ウェアラブルデバイスの心拍数は心電図に使われる電気的信号ではなく、近赤外線を使った血液の流れを測定しています。
光を血管に照射し、光量の変化から心拍数を推定します。
従って、高強度のトレーニングをして心拍数が上昇すると正確性が失われます。
歩数は加速度センサーやGPSで推定します。
手首に装着するタイプのウェアラブルデバイスは、手首の振りを測定します。
同じ速度で歩いても、人によって手首の振り方は異なります。
走る時は、さらに個人差が大きくなります。
心拍数や速度は、体重、性別、年齢による測定誤差はありません。
消費カロリーは運動量に加えて、身長・体重・年齢・基礎代謝などが影響します。
変動する要因が多いため、推定が難しいのが消費カロリーです。
消費カロリーを正確に推定するには、多くのデータが必要です。
ジョギングした時の消費カロリーは、ウェアラブルデバイスの加速度センサーやGPS、心拍数、呼吸数、体温、SPO2から推定します。
下り坂、上り坂、風向き、気温など外部の要因も消費カロリーに影響します。
ユーザーの体重、性別、年齢も大きな要因となります。
それらの情報と各メーカーのアルゴリズムから消費カロリーを推定します。
ウェアラブルデバイスによるHRV(心拍変動)の測定についてはこちらの記事を参考に
ロードバイクのストレスを数値化し、リカバリーを促進するためのHRV(心拍変動)活用方法
ランニングマシンを使っても消費カロリーには誤差がある
外的な要因があまり影響しないランニングマシンを使っても、消費カロリーは正確に推定できません。
ランニングマシンに与えられる情報は性別、体重、心拍数、速度のみです。
ランニングマシン上で30分消費カロリーを測定を正確に測定したところ、ランニングマシーンは実際よりも128キロカロリー多く表示しました。
ダイエットについてはこちらの記事を参考に
ロードバイクの2大エネルギー源「脂肪と糖」のもの凄く深い関係を知ってダイエットやレースに活用する方法
正確に消費カロリーを測定する方法
正確に消費カロリーを測定する場合は、間接熱量測定法が使われます。
間接熱量測定法とは、取り込んだ酸素量と吐きだした酸素量の差を測定する方法です。
呼気と吸気の差を測定することで、体内で消費された酸素量が分かります。
測定結果から、エネルギー消費量を計算します。
酸素を1リットル消費すると、消費カロリーは5キロカロリーになります。
間接熱量測定法は正確に消費カロリーを測定できますが、常に測定用マスクをつけるのは現実的ではありません。
一般のユーザーが消費カロリーを知るには、ウェアラブルデバイスに頼るしか方法がないのが現状です。
ロードバイクの消費カロリー算出方法
ロードバイクは運動エネルギーを正確に測定できる
ロードバイクは、ランニングなどと異なりパワーを測定できます。
パワーを測定することで、他の競技よりも正確に運動エネルギーを推定できます。
運動エネルギーの大きさはキロジュール表します。
ロードバイクの運動エネルギー(キロジュール)の計算式
パワー(ワット)=トルク×ケイデンス
キロジュール=ワット×秒/1000
(例)200Wで1時間(3600秒)走った場合
200×3600/1000=720(キロジュール)
ロードバイクは、自転車を前に進めるために必要な運動エネルギーを測定することができます。
運動エネルギーは性別・年齢・体重に関係なく測定できます。
体重100kgの男性でも、体重50kgの女性でも、同じワットで同じ時間ペダルを回せば同じ運動エネルギーになります。
運動エネルギー≠消費カロリー
キロジュールが運動エネルギーを表すのに対して、食べ物のエネルギーはキロカロリーで表します。
トレーニング後の食事はキロカロリーであり、ロードバイクを前に進めるエネルギーはキロジュールです。
多くの人が知りたいのは運動エネルギー(キロジュール)ではなく、消費カロリー(キロカロリー)です。
キロジュールを生み出すために、何キロカロリーが消費されるかを考える必要があります。
キロジュールとキロカロリーはどちらもエネルギーの単位です。
変換式は下の通りです。
1キロカロリー=4.184キロジュール
上の式は、運動エネルギーを消費エネルギーに変換しただけです。
ペダルを回す以外のトレーニング中に使われたエネルギーを考慮していません。
消費カロリーについてはこちらの記事を参考に
ヒルクライムが速くなるテクニック3選 ペーシング・補給カロリーを最適化してダンシングを使いこなす方法
ペダルを回すために消費したカロリーは全体一部に過ぎない
車のように、消費した分だけガソリンを足せれば良いですが、人間の体は単純ではありません。
ペダルを回すためのエネルギーは、体全体の消費エネルギーの20%から25%しかありません。
食べたカロリーのうち、トレーニングに回せるのは20%から25%に過ぎないのです。
残りのエネルギーは、熱として放出されます。
食べ物の4分の1(25%)しか運動エネルギーにならないという考えから、運動エネルギー(キロジュール)=消費エネルギー(キロカロリー)とされています。
サイコンやウェアラブルデバイスの消費カロリーが誤差を生む原因は、熱として放出されるカロリーが正確に測定できないからです。
ペダルを回すために必要なカロリーは人によって大きく異なる
車で同じ道を走っても、車種や運転の仕方によって消費するガソリンの量は異なります。
同じ距離を同じ速度で走っても、人によって消費カロリーは大きく異なります。
従って、ペダルを回すために消費するカロリーは20%から25%と幅を持たせています。
ロードバイクでどれくらいエネルギーを消費するかをサイクリングエコノミーと呼びます。
サイクリングエコノミーは、車の燃費のようなものです。
ロードバイクが速い人ほど、有酸素能力が高い人ほど、燃費が良くなります。
サイクリングエコノミーが上昇するほど、同じトレーニングでも消費カロリーは少なくなります。
同じ720キロジュールのトレーニングをしても、サイクリングエコノミーの高い人は600キロカロリーかも知れません。
サイクリングエコノミーの低い人は720キロカロリー消費するかも知れません。
この差は、長期的に見れば大きな差になります。
表示される消費カロリーは、速い人ほど実際よりも大きく表示される可能性があります。
ウェアラブルデバイス消費カロリー表示の精度
最新のウェアラブルデバイスの正確性は一般ユーザーには分からない
最新のウェアラブルデバイスが正確かどうかは、一般ユーザーには分かりません。
最新のウェアラブルデバイスの正確性・信頼性を知りたいと願うのは、ユーザーの自然な願望です。
ウェアラブルデバイスの正確性について、研究対象になることがあります。
しかし、研究を始めた時は最新の製品であったとしても、結果が出る数年後には数世代前の製品になっています。
ウェアラブルデバイスのバージョンアップの速度は早く、研究結果がそれに追いつくことは現在の所ありません。
2022年に発表された研究では、主要3メーカーのウェアラブルデバイスを装着してランニング、ロードバイク、ウォーキング、筋トレをした場合の変動係数は15%から30%でした。
変動係数が±3%を「正確」とした場合、この結果は「精度が悪い」となります。
ウェアラブルデバイスは、スポーツや日常生活のモニタリングデバイスとして使われています。
しかし、医療用として使うにはまだ精度が不足していると考えられています。
パワーメーターについてはこちらの記事を参考に
低価格と信頼性を実現した「4iiiiパワーメーター」を買って取り付けてみた
ウェアラブルデバイスの消費カロリー推定精度
ウェアラブルデバイスの消費カロリー推定精度は、前述した間接熱量測定法に比べると劣ります。
歩行時のウェアラブルデバイス消費カロリー精度調査の結果を紹介します。
遅く歩く・普通に歩く・速く歩くの場合を比較すると、ウェアラブルデバイスの消費カロリーは遅く/速く歩く場合に精度が上がります。
早歩き以上の運動強度になると、ウェアラブルデバイスの消費カロリー推定精度は低下します。
調査した4つのウェアラブルデバイスの中で最も精度が高い製品でも、±54%の誤差がありました。
普通に歩く時の消費カロリー精度は低くなりました。
これは、ウェアラブルデバイスが加速度センサーも使って消費カロリーを推定することと関係していると考えられます。
遅歩きから普通歩きに移行する際、運動強度自体はそれほど上がらないにも関わらず、腕の振りは大きくなります。
このため、体内の反応以上に腕の動きを過大評価してしまい精度が落ちたと考えられます。
ロードバイクはパワーを使って運動エネルギーを測定します。
パワーを用いて消費カロリーを推定場合は、加速度センサーを使う場合に比べて精度が上昇する可能性があります。
睡眠時やデスクワーク中など、体の動きが少ない時間帯の精度は高い傾向があります。
安静時は、消費カロリーを心拍数、体温、SPO2、HRVなど変動の少ない数値から推定するためと考えられます。
ウェアラブルデバイスの消費カロリー表示との付き合い方
消費カロリーを知りたい最終的な理由は、いつどれくらい食べれば良いかを知りたいからです。
この理由は、レース結果を求めるプロ選手でもダイエット目的の人でも同じです。
ダイエットが目的の場合、ウェアラブルデバイスに表示された量を参考に食事をして体重が増えるようなら食べすぎです。
レース中の補給量が知りたい場合、日頃のトレーニングの補給を記録しておく事が重要です。
ウェアラブルデバイスの消費カロリーは、大きく表示される傾向があります。
ウェアラブルデバイスの消費カロリー表示が100%正しいとは言えないからといって、全く当てにならない訳ではありません。
ウェアラブルデバイスの進化は非常に速く、精度は日々進歩しています。
絶対的に正しくないから信用しないのではなく、数値を参考にしながらトレーニングする必要があります。
