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乳酸が溜まりにくい体になれば、ロードレースに勝てる理由と乳酸閾値上昇のためのトレーニング方法

Contents

乳酸が溜まりにくい体になればロードバイクが速くなる理由

ロードバイクの速さを決めるのはFTPやVO2MAXだけではない

ロードレースでは、FTPやVO2MAXがパフォーマンスを決める大きな要因と言われることが多いです。

ロードレースの勝敗を決めるのは、身体能力だけではありません。
ロードレースは、戦術や展開を読む力も大切です。
FTPやVO2MAXが高ければ、ロードレースで勝てるとは言い切れません。

アマチュアレベルでは、FTPやVO2MAXが勝敗を左右する大きな要因です。

VO2MAXについてはこちらの記事を参考に

Vo2maxが高ければロードバイクのレースは勝てるのか!?
VO2MAXは「最大酸素摂取量」のことです。
運動中に体内に取り込める酸素の量のことです。
体内に取り込める酸素の量が多い人ほど、よりハードに長くペダルを踏むことができます。

VO2MAXが高い人ほど酸素を体に取り込む能力が高いよ!

ロードレースのパフォーマンスを決めるもう一つの要因 乳酸閾値

FTPやVO2MAXと同じくらい重要な能力の指標が、乳酸閾値です。

乳酸は、疲労の原因物質ではありません。

乳酸はエネルギー源として体内に存在しています。

乳酸は産生されると同時にエネルギーとして利用されます。

運動時に多くの乳酸ができるのは、糖をエネルギーとして消費する割合が増えるためです。

糖の分解量がミトコンドリアでの酸化反応量以上に高まると、その差分が乳酸の蓄積になります。

ミトコンドリアについてはこちらの記事を参考に

ミトコンドリア増殖でロードバイクが速くなる理由と効率的な増やし方

乳酸閾値とは、筋肉や血中の乳酸濃度が上昇することなく継続的に維持できる最大出力です。
乳酸閾値は、最大乳酸定常状態(MLSS=MaximalLactate Steady Stat)とも呼ばれます。
30分間の一定負荷テストで、10分と30分の血中乳酸濃度の増加が1mmol/L以下となる強度です。

乳酸閾値は、血中乳酸濃度が上がりも下がりもしない最大パワーのことです。

あるワット以上になると血中乳酸濃度が上昇し始める

乳酸閾値曲線

上のグラフは、ワット数と血中乳酸濃度の関係を表したものです。
低強度(100Wから140W)では、血中乳酸濃度の上昇はほぼ横ばいです。

高強度(220Wから260W)になると、急に血中乳酸濃度が上昇するのが分かります。

この人の乳酸閾値は220W程度と予想できます。

乳酸閾値が高い人は、低い人と同じ速度で走っていても乳酸濃度が上昇しません。
乳酸閾値より高い強度では、血中の乳酸濃度が上昇します。
乳酸閾値より低い強度では、血中の乳酸濃度が下降します。
乳酸閾値でペダルを踏むと、長時間でも乳酸濃度が上昇しません。

乳酸閾値でペダルを踏むと血中乳酸濃度は上昇しないよ


乳酸閾値以上の強度でエネルギー供給が、脂質代謝から糖質代謝に切り替わると考えられています。

VO2MAXが高くても乳酸閾値が低ければロードレースに勝利できない

乳酸閾値が低いとどうなるか見てみよう


A選手とB選手がいます。
A選手のVO2MAXはB選手より高いですが、乳酸閾値はB選手より低いです。
A選手とB選手がレースをしました。
B選手の乳酸閾値で走った場合、A選手は乳酸閾値以上なので乳酸濃度が上昇し疲労で走れなくなります。
A選手はVO2MAXが高いにも関わらず、B選手に負けてしまいました。

VO2MAXが高くても、乳酸閾値が低いと疲労して負けてしまうことがロードレースでは起こり得ます。

乳酸濃度を決める要因

乳酸濃度を決める要因は一つではない

乳酸は産生されるのと同時にエネルギーに変換されます。

乳酸濃度は、産生の利用のバランスのみで決まる訳ではありません。

周囲の温度や湿度、測定部位の影響も受けます。

乳酸の産生

血中乳酸濃度を決める最も大きな要因は、乳酸の産生です。

乳酸の産生は、糖分解により起こります。

糖分解は、必要量以上に起こります。

糖は急速に使えるエネルギー源なので、スプリントの際に大量に分解されます。

多くのエネルギーを作り出し、後に調整するようになります。

糖の貯蔵量は少ないので、多く分解するとすぐに尽きてしまいます。

1kmタイムトライアルの後半は、糖分解が低下した状態です。

乳酸のエネルギー利用

産生された乳酸は、酸化されてエネルギーになります。

乳酸の産生と参加が釣り合った状態が、LT(乳酸閾値)です。

LTは、一般的に3mol/lから4mol/lです。

安静時の乳酸濃度は1mol/lです。

LTより強度の高い運動をすると、乳酸濃度が高まります。

周囲の温度・湿度

乳酸濃度は血液中の乳酸量です。

従って、同じ乳酸量でも血液の量が増えれば乳酸濃度は下がります。

トレーニング中に血液の量が変化する最も大きな要因は、脱水です。

汗をかいて脱水が起こると、血液の量は減少します。

汗の量は、気温と湿度の影響を大きく受けます。

暑熱順化により、体内の水分調整が上手くいくと、乳酸濃度が上昇しにくくなります。

乳酸濃度は、産生量や酸化量だけでなく周囲の環境も影響します。

暑熱順化についてはこちらの記事を参考に

真夏のロードレースで勝つために 熱中症のリスクと暑熱順化を徹底解説

測定部位

乳酸濃度は体のどの部分でも同じ、という訳ではありません。

乳酸を産生する筋から出てきた静脈の乳酸濃度は、高くなります。

乳酸を酸化しエネルギーに変換する筋から出てきた静脈の乳酸濃度は、低くなります。

乳酸を測定するための血液は、指先から採取します。

指先の血管は、静脈血です。

耳から採取する場合もあります。

耳の血管は動脈血に近いです。

従って、耳から採取した場合は乳酸濃度が低くなる傾向があります。

期間を空けて継続的に測定する場合は、同じ部位で測定する必要があります。

汗の混入

パワーではなく、血液を採取して簡易的に乳酸濃度を測定する機器が販売されています。

その際に気をつけるのは、汗の混入です。

汗には、多量の乳酸が含まれています。

トレーニング時の汗の乳酸濃度は血液の乳酸濃度より高くなります。

簡易的な測定機器を使う際は、アルコールで皮膚をよく拭いてから血液採取します。

製品により、測定値に誤差が出ます。

継続的に測定する場合は、同じ製品を使う方が誤差が少なくなります。

乳酸閾値を上昇させてロードレースに勝つ方法

A選手とB選手に必要なトレーニング

前述のA選手、B選手にそれぞれ必要なトレーニング方法は異なります。
A選手は、乳酸閾値を上げるトレーニングが必要です。
B選手は、VO2MAXを上げるトレーニングが必要です。

A選手とB選手は違うトレーニングが必要


乳酸閾値を上げるトレーニングとVO2MAXを上げるトレーニングは、全く違います。
乳酸閾値を上げるトレーニングは、有酸素能力を高める必要があります。
VO2MAXを上げるトレーニングは、糖質をエネルギー源とした解糖系パワーを上げることが目的です。

VO2MAX向上と乳酸閾値向上のトレーニングは全然違うよ


A選手は、有酸素能力を高める必要があります。
B選手は、解糖系パワーを上げる必要があります。
もしA選手とB選手が同じトレーニングメニューをした場合、一方には有効でも一方には効果がないものになります。

VO2MAX向上トレーニングについてはこちらの記事を参考に

ZWIFTワークアウトでVo2maxインターバル

有酸素能力向上トレーニングについてはこちらの記事を参考に

ロードレース必勝法!有酸素運動能力トレーニング

乳酸閾値を上げる2つのトレーニング方法

乳酸閾値を上げる2つのトレーニング

乳酸閾値を上げるには、体内に乳酸が蓄積しにくい体になる必要があります。

有酸素能力が高くなると、筋内のミトコンドリアが増えます。

ミトコンドリアが増えると、エネルギーにしにくい脂肪の利用割合が高まります。

同じ強度でペダルを踏んでも、糖の利用割合が減少するようになります。

糖の利用割合が減少すると、乳酸が作られる量が減ります。

また、ミトコンドリアが増えると、より多くの乳酸をエネルギーに変えることができます。

乳酸の産生量は減り、消費量は増えるようになります。

乳酸が溜まりにくい体になれば乳酸閾値は上がるよ


重要なのは、乳酸閾値のVO2MAXに対するパーセンテージです。
乳酸閾値を上げる方法は2つです。

それぞれトレーニング方法が違うよ

乳酸の生成を抑えるトレーニング

乳酸の生成を抑えるには有酸素能力を向上させるよ


糖質やグリコーゲンを分解してエネルギーに変えるほど、乳酸は産生されます。
このシステムは、解糖系と呼ばれます。
有酸素能力を高めて好気性代謝を増やすと、解糖系を減らすことができます。


脂肪とピルビン酸を酸化して、エネルギーを作ることができるようになります。
ピルビン酸を酸化するにはミトコンドリアです。

重要なのはミトコンドリアの密度

ミトコンドリアの密度と機能を高めると、乳酸閾値を上げることができます。
ミトコンドリアは、機能よりも密度が重要です。
ミトコンドリアの密度が増えることで、有酸素能力が上昇します。
ミトコンドリアの密度を増やすトレーニングに、強度はあまり関係ありません。
大切なのはトレーニングボリュームと時間です。

必要なのは強度じゃなくて時間


ミトコンドリア密度を増やすために、ハードに追い込む必要はありません。
ハードに追い込むと、疲労によりトレーニング時間が短くなってしまいます。
乳酸の生成を抑えるトレーニンは、2時間から3時間のロングライドが有効です。
IFは0.65程度に抑えます。
強度を上げる必要はありません。

ロングライドが大切なんだね!


ミトコンドリアについてはこちらの記事を参考に

【ロードバイク】ミトコンドリアを増やしてVo2max上昇!

速筋が遅筋化する可能性

乳酸の生成を抑えることが、全ての選手にとってベストとは言えません。

有酸素トレーニングに特化すると、筋内にミトコンドリアや毛細血管が増えます。

これらは、遅筋の特徴です。

速筋が遅筋の特徴を持つことで、中間筋の割合が高まります。
糖質をエネルギーにする能力が抑えられすぎると、アタックや短い登りに対応できなくなります。
トラックの短距離種目選手は、爆発的なパワーが出せなくなる可能性があります。

乳酸除去能力を高めるトレーニング


血中の乳酸濃度が上昇すると、体は骨格筋や心臓、腎臓、肝臓などに乳酸を移動させ酸化させます。
乳酸除去能力を向上させるのに必要なのは、高いトレーニング強度です。

高強度トレーニングで乳酸除去能力が高まるよ


血中に大量の乳酸を生成させる必要があるためです。
血中に大量の乳酸が生成されると、血液のPHを維持するために他の部位に乳酸を移動させようとします。

乳酸を大量生成する必要があるんだね

乳酸除去能力の向上に有効なのはスイートスポットトレーニング(SST)です。
2×20分のFTPより上のインターバルが、乳酸除去能力の向上に有効です。
スイートスポット強度のトレーニングにより、乳酸除去能力が向上します。
トレーニングの目的は乳酸の生成量を減らすことではなく、除去能力を高めることです。

スイートスポットトレーニングについてはこちらの記事を参考に

スイートスポットトレーニング 時間効率重視でロードバイクトレーニング!向いている人は?やり方は?時間は?強度は?ZWIFTワークアウトは?疑問を全て解決!

VO2MAXと乳酸閾値の最適バランスは選手によって違う

パフォーマンスを決めるのは乳酸閾値とVO2MAXのバランス

乳酸閾値とVO2MAXの最適バランスとは

ロードレースのパフォーマンスは、乳酸閾値とVO2MAXの割合に左右されます。
高いパフォーマンスを発揮するには、乳酸閾値とVO2MAXの両方を高める必要があります。
パフォーマンスは、有酸素能力(乳酸閾値)と解糖系パワー(VO2MAX)のバランスの結果です。
乳酸閾値が高いと、一定出力での乳酸生成量は少なくなります。
無酸素パワーが高いと、一定出力での乳酸生成量が多くなります。

それぞれ、糖と脂肪の利用割合が異なるためです。
無酸素パワーを必要以上に強化すると乳、酸閾値が下がります。
自分の目的とする種目によって、理想のバランスは異なります。

短距離トラック選手とロードレーサーで最適なバランスは違うんだね


スプリンターやトラックの短距離種目の選手は、糖質をエネルギー源にして高い出力を出す必要があります。

乳酸閾値はある程度低くても大丈夫です。
ロードレーサーは、有酸素能力がレース結果に大きく貢献します。

従って、乳酸閾値を上げる必要があります。

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