ロードレースは、アタックの連続です。
レース中は何度もアタックが繰り返され、逃げが形成されます。
アタックが成功しない場合は、集団スプリントになります。
逃げ集団に入っても、最後は数人のゴールスプリントが待っています。
ロードレースは、持久的スポーツです。
持久的スポーツでありながら、反復スプリントの能力が要求される珍しい競技です。
スプリントトレーニングについてはこちらの記事を参考に
反復スプリントとは、短時間に何度も繰り返される瞬発的な動きです。
競技中の反復スプリントは、チームスポーツで多く要求されます。
サッカーやバスケットボールは高い反復スプリント能力が必要です。
反復スプリントに求められるのは、ピークパワーとその維持能力です。
1回のピークパワーが高いだけではダメです。
ただ反復するだけでなく、ピークパワーの低下を限りなく抑える必要があります。
反復スプリントの能力が劣る選手は、ゲーム後半に活躍できなくなります。
反復スプリントとは、30秒以下の短いリカバリーと6秒以下のピークパワーを繰り返す能力です。
ピークパワーは2秒から3秒のダッシュに相当します。
距離にして10mから20mです。
ロードレースの場合は、短いアタックの応酬に相当します。
インターバルトレーニングについてはこちらの記事を参考に
オーバー・アンダーインターバルが乳酸除去能力を高める理由とZWIFワークアウト3選
筋収縮には、エネルギーが必要です。
筋収縮に必要なエネルギーは、ATPから生成されます。
スプリントのような激しい運動は、大量のATPが必要です。
筋肉内に貯蔵できるATPは、限られています。
クレアチンリン酸は、筋肉内で分解され、ATPを短時間で大量に供給します。
クレアチンリン酸は筋肉にとって重要なエネルギー貯蔵物質です。
反復スプリントで使われるエネルギー源は、クレアチンリン酸と言えます。
タンパク質についてはこちらの記事を参考に
クレアチンリン酸によるエネルギー供給システムが、ATP-CP系です。
エネルギー供給は次の3つに分かれます。
反復スプリントで、最もエネルギーを生むのがATP-CP系です。
スプリント中は、ATP-CP系のみが働いている訳ではありません。
解糖系、有酸素系も大きく関与しています。
6秒のスプリントの場合、ATP-CP系によるエネルギー供給は約50%です。
残りの約50%は、解糖系が約40%・有酸素系が約10%です。。
ATP-CP系は酸素が必要ないため、スプリントは無酸素運動と呼ばれます。
しかし、厳密な意味での無酸素運動は存在しません。
どんなに短時間の運動でも、解糖系と有酸素系が関わっています。
有酸素能力についてはこちらの記事を参考に
【なぜZWIFTならダイエットが成功するのか】その理由と最適な有酸素ワークアウト5選
クレアチンリン酸は、約6秒で枯渇します。
クレアチンリン酸が枯渇すると、パワーが急激に低下します。
パワーが低下すると、回復が始まります。
クレアチンリン酸は2分後に84%、4分後に89%、8分後に100%回復します。
クレアチンリン酸の利用率は、疲労速度をコントロールする主要因と考えられています。
筋肉内のクレアチンリン酸貯蔵量が多いほど、ピークパワーが上がります。
クレアチンリン酸を短時間で大量に消費できる選手ほど、スプリント能力が高くなります。
クレアチンは、アミノ酸の一種です。
赤身の肉や魚から摂取できます。
体内でも、毎日1gから2g生成されます。
体内に取り込まれたクレアチンはリン酸と結合し、クレアチンリン酸になります。
アミノ酸についてはこちらの記事を参考に
ロードバイクにアミノ酸が必須な理由とBCAAの効果 EAAとの違いも解説
クレアチンリン酸がエネルギーを作った後にできるのが、クレアチニンです。
クレアチニンは、老廃物の一種です。
クレアチニンは、体内で再吸収されません。
クレアチニンは、腎臓でろ過されて排出されます。
腎機能が低下すると、クレアチニンの血中濃度が高まります。
クレアチニン濃度は、健康診断で腎機能低下の指標に使われることもあります。
クレアチニン濃度上昇の要因は、腎機能低下だけではありません。
クレアチン錠剤の摂取や過度のトレーニング、脱水、筋損傷などでも血中クレアチニン値が高くなります。
脱水についてはこちらの記事を参考に
ピークパワーは、クレアチンリン酸の最大消費能力にかかっています。
反復スプリントに最も影響するのはATP-CP系です。
しかし、反復スプリントは解糖系や有酸素系も影響します。
スプリントを繰り返すのは、ATPの再合成が不可欠です。
何回スプリントできるかは、ATP-CP系、解糖系、有酸素系によるATPの素早く安定した再合成能力にかかっています。
解糖系は血中グリコーゲンを分解し、ATPを再合成します。
エネルギー生成は、ATP-CP系ほど早くありません。
6秒のスプリントを繰り返すと、解糖系によるエネルギー供給割合が低下します。
6秒‐30秒スプリント
1回目 ATP-CP系:解糖系=50:44
2回目 ATP-CP系:解糖系=80:16
筋肉中のグリコーゲン濃度が低い人ほど、繰り返しスプリント能力が低くなります。
糖質についてはこちらの記事を参考に
ロードレーサーのための低糖質トレーニング徹底解説 目的・やり方・注意点
有酸素系も、反復スプリントに大きく関与しています。
30秒スプリントの最初の10秒に、有酸素系は10%のエネルギーを供給します。
有酸素系で作られるATPは、必要量よりかなり少ないです。
有酸素系だけでは、繰り返されるスプリントに対応することはできません。
マックスパワーは筋肉に貯蔵されたクレアチンリン酸の量で決まります。
クレアチンリン酸の再合成は、解糖系と有酸素系が関わります。
従って、反復スプリントを向上させるには、クレアチンリン酸貯蔵量の増加と有酸素能力の向上が必要です。
筋トレについてはこちらの記事を参考に
筋トレでロードバイクが速くなる スクワット徹底解説【フォーム・効果・注意点】
速筋は、遅筋より多くのクレアチンリン酸を貯蔵できます。
スプリント時に大量にクレアチンリン酸を消費できます。
速筋と遅筋の割合は生まれながらに決まっています。
筋肉量の増加は、トレーニングにより可能です。
速筋と遅筋の割合を変えることは困難ですが、筋肉量を増やすことで反復スプリントが強くなります。
速筋と遅筋についてはこちらの記事を参考に
筋タイプを知ってロードレースに勝つ方法 速筋・遅筋を徹底解説
反復スプリントの向上は乳酸閾値トレーニングが有効です。
乳酸閾値とは、血中乳酸濃度が上昇し始める運動強度のことです。
乳酸は疲労原因物質ではなく、エネルギー源です。
乳酸をエネルギーに変換できなくなり、処理しきれなくなる強度が乳酸閾値です。
乳酸閾値を向上させることで、有酸素能力が高まります。
有酸素能力が向上することで、クレアチンリン酸の再合成が促進されます。
乳酸閾値(LT)トレーニングについてはこちらの記事を参考に
反復スプリントを引き上げるには、クレアチンリン酸を大量に貯蔵することが必要です。
クレアチンは平均的な食事の場合、1日1g摂取できます。
体内で毎日1gから2g生成されます。
通常の生活で、毎日3g程度摂取しています。
3gの摂取では、クレアチンを飽和させることはできません。
食品に含まれるクレアチンは微量なので、通常の食事でクレアチンを飽和させるのはほぼ不可能です。
クレアチンは、サプリメントから摂取することもできます。
推奨される摂取量は一日5gです。
粉末状のサプリメントで摂取します。
サプリメントから摂取することで、筋肉のクレアチン貯蔵量を30%増加させることが立証されています。
クレアチンを飽和させるには、最低でも28日間続ける必要があります。
クレアチン貯蔵量の増加は、反復スプリントを高めます。
多くの実証実験で、マックスパワーが1%から5%、反復スプリントが5%から15%向上しています。
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クレアチンを摂取すると、体重が増加します。
クレアチンをローディングすることにより、体重が1kgから2kg増加することが知られています。
クレアチンは水と結合する性質があるため、体内の水分量増加が体重増加につながると考えられています。
この体重増加はデメリットとは言い切れません。
ただし、体重1kgあたりのパワーであるパワーウェイトレシオが低下する可能性はあります。
体内の水分量が増えることで、脱水や痙攣を予防できるとする研究もあります。
クレアチンを長期間サプリメントから摂取することによる健康被害は報告されていません。
過剰摂取は胃腸障害やむくみ等を引き起こす可能性があります。
過剰摂取による弊害は全てのサプリメントに言えることです。
通常の服用量を守れば、体重増加以外の弊害は報告されていません。
サプリメントについてはこちらの記事を参考に
ロードレーサーにプロテインが必要な3つの場合と540プロジェクトを薦める3つの理由