VO2MAXは、最大酸素摂取量を意味します。
ロードバイクにおいて、有酸素能力の目安になります。
有酸素能力を示す指標はFTP、LTなど色々あります。
VO2MAXは、ロードバイクの能力を表す重要な指標の一つです。
ロードレースは、戦略がレースの勝敗を大きく左右します。
「VO2MAXが高い=レースに勝つ」とは言えません。
有酸素能力についてはこちらの記事を参考に
VO2MAXは、体重1kgあたりの1分間に消費できる酸素量です。
単位は【ml/kg/min】です。
VO2MAXと混同しやすい指標の一つが乳酸閾値(LT)です。
LTは乳酸が除去されるより早く筋肉に蓄積されるようになる強度のことです。
LTを超えると、血中乳酸濃度が急激に上昇し、疲労感が増します。
VO2MAXは、運動強度が上がっているのに酸素消費量が上がらなくなる数値です。
VO2MAX以上の強度では、酸素消費量が一定になり、体内に酸素を取り込む限界を迎えます。
VO2MAX以上のパワーを長時間維持することはできません。
疲労困憊になり、オールアウトします。
乳酸閾値についてはこちらの記事を参考に
乳酸を知ってロードレースに勝つ方法 LT向上ZWIFTワークアウト
ロードバイクはペダルを回せば前に進みます。
ペダルを回すパワーをどうやって生んでいるかは、関係ありません。
VO2MAXを他人と比較して高いか低いかを知る意味は、あまりありません。
自分の好奇心を満たすだけです。
FTP判定についてはこちらの記事を参考に
【ロードバイクFTP判定】自分のFTP 高いor低い?国内プロ・海外プロと比較!
自身のVO2MAXを継続的に知ることは、意味があります。
VO2MAXは、トレーニングの進捗状況を知る指標になります。
タイムトライアルやヒルクライムといった、一定パワーが必要な時のペーシングにも使えます。
VO2MAXが高いにも関わらず、レースで勝てない場合は戦略を見直す必要があります。
VO2MAXトレーニングについてはこちらの記事を参考に
VO2MAXが標準より低い場合は、トレーニングを見直す必要があります。
VO2MAXは比較的短期間で上昇します。
トレーニング効果の高い能力です。
VO2MAXを正確に測るには、スポーツラボに行く必要があります。
アマチュアでもVO2MAXを知るために、様々な方法が考え出されています。
VO2MAXを心拍数やランのタイムから推定する方法です。
ロードバイクの場合は、パワーから推定します。
ロードバイクは、ランニングに比べて機械的で単純な動作です。
推定値は、ランニングより正確になります。
ZWIFを使った推定方法についてはこちらの記事を参考に
ZWIFTでパワー解析 最大パワー・VO2MAX・FTPを見る方法
VO2MAXを推定する式は下のとおりです。
{0.0108×5分間パワー+0.007×体重(kg)}÷体重(kg)×1000
【例】体重60kgで5分間のパワーが300Wの場合
{0.0108×300+0.007×60}÷60×1000=47.4ml/kg/分
5分間の最大平均パワーを上の式に当てはめて推定します。
使うのは、5分間の平均最大パワーです。
最初に飛ばし過ぎて、後半に失速しないように注意します。
5分間、平均してパワーを出し続けるのは経験が必要です。
何度か測定し、慣れることが必要です。
スマートトレーナーなどの固定ローラーは実走よりも低い値が出ます。
FTPテストについてはこちらの記事を参考に
ZWIFT FTPテスト全4種類徹底解説 20分テスト・ランプテスト ベストなFTPテスト方法を紹介
VO2MAXの基準は、下の表のとおりです。
20歳~29歳 | 30歳~39歳 | 40歳~49歳 | 50歳~59歳 | 60歳~ | |
非常に高い | 50 | 48 | 47 | 42 | 42 |
やや高い | 45 | 42 | 42 | 37 | 34 |
平均 | 40 | 39 | 37 | 34 | 31 |
やや低い | 36 | 34 | 33 | 30 | 27 |
非常に低い | 33 | 31 | 30 | 28 | 25 |
概ね40ml/kg/minが標準値です。
女性は、男性より20%低い基準値になります。
VO2MAXは酸素を取り込む能力なので、標高が高いほど減少します。
標高が1500m上がるにつれて、VO2MAXは5%減少するとされています。
VO2MAXは加齢の影響も大きく受けます。
VO2MAXは20歳でピークを迎え、その後少しづつ減少します。
加齢により直線的に減少するのではありません。
40歳を過ぎると毎年1%減少するとされますが、個人差が大きいです。
高齢になると、加速度的に減少します。
加齢によるVO2MAXの減少は、トレーニングの影響を大きく受けます。
適正なトレーニングを続けることで、VO2MAXの減少は食い止めることができます。
中高年のトレーニングについてはこちらの記事を参考に
世界トップクラスの男性持久系アスリートのVO2MAXは80ml/kg/minを超えます。
中には、90ml/kg/minを超える選手もいます。
女性のトップクラスは70ml/kg/minを超えます。
VO2MAXの男性世界最高値を記録したのはプロロードレーサーのオスカル・スヴェンセンです。
男性で90ml/kg/min以上を記録した選手は、プロロードレーサー、トラック競技選手、クロスカントリー選手が多いです。
プロロードレーサーのVO2MAXは80ml/kg/minを超えます。
ツール・ド・フランスを4回制覇したクリストファー・フルーム選手のVO2maxは84.6ml/kg/minです。
かつてツールドフランス総合5連覇を果たしたミゲル・インデュラインは88.0ml/kg/minです。
アメリカ人としてツールドフランス総合初優勝したグレッグ・レモンは92.5ml/kg/minです。
90ml/kg/minの壁を破った選手は世界でも極少数です。
女子トップ陸上選手のVO2MAXは70mL/kg·minを超えます。
女性で初めてフルマラソン2時間25分を切ったジョーン・ベノイトのVO2MAXは78.6 mL/kg·minです。
リオオリンピック女子ロードレース7位のフラビア・オリベイラのVO2MAXは76 mL/kg·minです。
グレッグ・レモン(男子) | 92-94 mL/kg·min |
ランス・アームストロング(男子) | 84 mL/kg·min |
ミゲル・インドゥライン(男子) | 88 mL/kg·min |
クリス・フルーム(男子) | 84.6 mL/kg·min |
フラビア・オリベイラ(女子) | 76 mL/kg·min |
ジョーン・ベノイト(女子陸上選手) | 78.6 mL/kg·min |
プロロードレーサーのトレーニングについてはこちらの記事を参考に
ZWIFTで自転車トラック競技ができるプロ選手考案ワークアウト5選
VO2MAXの数値は選手の企業秘密であり、公開されているわけではありません。
数値が明らかで、過去最も高いVO2MAXを記録した選手の一人に、オスカル・スヴェンセンが居ます。
オスカル・スヴェンセンはVO2MAXの高さと共に、短く輝いたキャリアでも知られています。
世界で活躍したのは2012年から2014年までの僅か2年間でした。
その間に、世界選手権ジュニアで優勝し、史上最高のVO2MAXを記録しました。
オスカル・スヴェンセンは1994年生まれのノルウェー人です。
小さい頃はサッカーとスキーをしていました。
ロードバイクを始めたのは高校生からです。
高校生の時のサイクリング・プログラムでVO2MAXを測定します。
特別なトレーニングをしていないにも関わらず、15歳で74.6ml/kg/minという驚異的な記録を出します。
その後、オスカル・スヴェンセンは本格的にロードバイクのトレーニングを始めます。
トレーニング時間は350時間/年から徐々に増え、18歳の時は759時間/年になります。
VO2MAXも、16歳で86.8ml/kg/minまで成長します。
そして18歳の2012年に96.7ml/kg/minのVO2MAXを記録し、世界選手権ジュニアタイムトライアルで優勝しました。
U23からはノルウェーのコンチネンタルチームに所属し、ツール・ド・ラヴニールで総合5位を獲得します。
しかし、怪我、病気、大きなプレッシャーが原因で、世界選手権ジュニアで優勝から2年後の2014年に自転車競技を引退します。
ロードバイクを降りて15か月後の2015年10月にVO2MAXを測定すると、77ml/kg/minでした。
77ml/kg/minは、通常の選手なら十分に高い数値です。
しかし、以前のオスカル・スヴェンセンと比較すると非常に低い数値です。
オスカル・スヴェンセンは、VO2MAXの潜在能力が遺伝的に高いことは明らかです。
元々高いVO2MAXが、数年で更に上昇しています。
トレーニングに対する反応、耐性、適正も高かったと考えられます。
トレーニングを辞めればVO2MAXが低下することも分かります。
VO2MAXは潜在的な能力も大切ですが、適切なトレーニングをしないと維持できないことが分かります。