女子プロサイクルロードレースは、かつてないほど高速化しています。
2022年に女性版ツールドフランス「ツール・ド・フランス・ファム アヴェック ズイフト」が初開催されました。
2023年に第2回が開催され、全8ステージ・956kmで争われました。
全日本チャンピオンである與那嶺恵理選手も参加しました。
総合優勝はフォレリング選手で、チームSDワークスが強さを見せました。
與那嶺恵理選手についてはこちらの記事を参考に
與那嶺恵理は女子プロロードレース最高峰「女子ワールドチーム Human Powered Health 」で2022年を戦う!
ファンフルーテン選手やフォレリング選手など、スター選手も誕生し、注目度も上がっています。
注目度と比例して、レースレベルも上昇しレースが高速化しています。
今後も高速化の流れは続くと予想されます。
パワーメーターによって、女子プロサイクルロードレース選手がどれくらい強いかを数値化できるようになりました。
女子プロサイクルロードレース選手は、どれ位のパワーでペダルを廻しているのかは気になるところです。
女性は男性より筋力が少ないため、出せるパワーも低くなります。
上半身に比べて、下半身の筋力は男女差が少し小さくなります。
一般的に女性の筋肉量は、上半身が男性の50%なのに対して、下半身は70%です。
筋肉量の差は、骨格やホルモン量の違いから生まれます。
若年層の筋肉量が少ないのも、同じ理由があります。
アマチュア女子選手のパワーの目安は下の表のとおりです。
レベル | 5秒間パワー(W/kg) | 1分間パワー(W/kg) | 5分間パワー(W/kg) | FTP(W/kg) |
非常に良い | 15.1~17.8 | 7.5~8.2 | 4.8~5.6 | 4.1~4.7 |
良い | 13.8~15.5 | 7~7.7 | 4.3~5 | 3.6~4.2 |
優れている | 12.3~14 | 6.3~7 | 3.6~4.4 | 3~3.7 |
普通 | 11~12.7 | 5.8~6.6 | 3~3.8 | 2.5~3.1 |
やや劣る | 9.7~11.5 | 5.2~6 | 2.5~3.2 | 2~2.7 |
劣る | <10.2 | <5.4 | <2.6 | <2.2 |
海外トッププロの女子プロサイクルロードレース選手は、国内男子選手と比べても遜色ないと言われています。
2020年ジロ・ローザの第1ステージ・チームタイムトライアルで優勝したトレック・セガフレードは16.8kmのコースを平均時速は50.1km/hで駆け抜けました。
コーナーの数など状況が違うので一概に比べることはできませんが、2019年プロツアー21戦 維新やまぐちタイムトライアルで優勝したチームブリジストンサイクリングは13.6kmのコースを平均時速は51.5km/hで走りました。
コーナー数、風向き、傾斜など条件が違うので一概には言えませんが、高速で走っていることが分かります。
タイムトライアルのスペシャリストであるクリスティン・フォークナー(アメリカ)が2021年に女子ヘント〜ウェヴェルヘムを走ったデータを見てみましょう。
ヘント〜ウェヴェルヘムは、ベルギー北部フランダース地方で3月に開催されるレースです。
スプリンターのクラシックレースとも呼ばれます。
石畳、横風、激坂が波乱のレース展開を呼びます。
2021年の女子ヘント〜ウェヴェルヘムは141kmでした。
クリスティン・フォークナーは7位でゴールし、タイムは3時間45分でした。
ワット数 | パワーウェイトレシオ | |
平均パワー | 226W | 3.6W/kg |
NP | 289W | 4.6W/kg |
最大パワー | 1005W | 16.2W/kg |
1分間最大平均パワー | 463W | 7.5W/kg |
5分間最大平均パワー | 383W | 6.2W/kg |
10分間最大平均パワー | 338W | 5.4W/kg |
4時間近いレースで5分間6.2W/kgや10分間5.4W/kgは、かなり高い数値です。
国内男子プロ選手と比べても遜色ない数値です。
ロードバイクの速さに大きく影響するのが筋肉量です。
男性は、女性より筋肉量が多いです。
体重に占める筋肉量は男性が40%から45%です。
それに対して女性は35%から40%です。
男性ホルモンであるテストステロンの分泌量には大きな男女差があります。
テストステロンは筋肉の発達に大きく影響します。
この差が男女の筋量の差に関係すると考えられます。
陸上競技の100m、400、マラソンの世界記録を比較すると、男性は女性の概ね90%です。
女子のレベルがさらに上がれば、男子ワールドツアーの1割遅い速度で女子レースも進行することになります。
男子プロロードレーサーについてはこちらの記事を参考に
【ロードバイクのVO2MAX判定】自分のVO2MAXは普通より高いor低い?【海外プロロードレーサーと比較】
選手の能力を表す数値の一つがFTPです。
「FTPが高い=レースで勝つ」とは言えませんが、選手の能力を示す指標の一つです。
ロードレースで勝利するには、パワーの他に戦術や運も必要です。
パワーだけでは勝てない理由についてはこちらの記事を参考に
CANYON//SRAM Racingの女子選手の平均FTPは250W~300Wと言われています。
アマチュア女子選手のFTPは、200W程度です。
海外女子トッププロ選手のFTPは、下の表の通りです。
選手名 | FTP | 体重 | FTP(W/kg) |
Evelyn Stevens | 305W | 55kg | 5.55W/kg |
Courtney Nelson | 238W | 43kg | 5.5W/kg |
Andrea Ramirez | 294W | 54kg | 5.44W/kg |
Ashleigh Moolman -Pasio | 264W | 49kg | 5.39W/kg |
Kristen Kulchinsky | 264W | 50kg | 5.3W/kg |
女子選手は体重が軽いので、FTPの絶対値が高くなくてもパワーウェイトレシオが高くなる傾向があります。
FTPの絶対値が高い選手としてクリスティン・フォークナー(FTP323W)などがいます。
パワーウェイトレシオについてはこちらの記事を参考に
Alpe du Zwift(アルプ・ド・ズイフト)60分切りのための5つの秘策と必要なパワーウェイトレシオ
時間別の最大パワーがパワープロフィールです。
自分のパワープロフィールを解析すると、瞬発力が高いのか持久力が高いのかなどが分かります。
パワープロフィールについてはこちらの記事を参考に
リアルな走りを数値化できる!パワー・スピード・プロフィールの作成・分析方法
各時間と体重1kg当たりのパワーを示すパワープロフィールは下の表の通りです。
海外女子トッププロ | 女子アマチュア | |
5秒 | 19W/kg | 13.5W/kg |
1分 | 9W/kg | 7W/kg |
5分 | 6.5W/kg | 4.5W/kg |
FTP | 5.5W/kg | 3.7W/kg |
2021年に女子プロサイクルロードレース選手を調査した結果は、下の表の通りです。
女子トッププロ | |
5秒 | 15.3W/kg |
1分 | 8.4W/kg |
10分 | 5.2W/kg |
60分 | 4.2W/kg |