プロロードレーサーが事故や病気で亡くなるとニュースになります。
残念ながら、最近でもレース中の事故や病気で若い選手が亡くなっています。
2018年のパリ~ルーベで23歳のミハエル・ホーラールツ選手がレース中に心停止しました。
病院へ緊急搬送され死亡が確認されました。
ハエル・ホーラールツ選手は、事故ではなく心疾患で亡くなったと考えれています。
2019年のツール・ド・ポローニュで22歳のビョルグ・ランブレヒト選手がレースに落車し死亡しました。
ビョルグ・ランブレヒト選手は2018年世界選手権U23で銀メダルを獲得するなど将来期待の若手でした。
2020年のツール・ド・ポローニュでファビオ・ヤコブセン選手がゴール前スプリントで時速80km/h以上でバリアーに激突し昏睡状態になりました。
ファビオ・ヤコブセン選手は頭骨を骨折しほぼ全ての歯が折れる重症でした。
幸いなことに事故から8か月後にレース復帰しています。
2021年のブエルタ・ア・エスパーニャでポイント賞(ステージ優勝3回)を獲得し完全復活を遂げています。
日本でも、残念ながらレース中の死亡事故が起きています。
ロードレースではありませんが、トライアスロンのバイクパートで事故が起こる事もあります。
ヤコブセン選手の事故を受けて、UCI(国際自転車競技連合)は対策リストを提示しました。
フィニッシュ地点のバリアの安全性向上が謳われています。
選手の健康に関する規定もあります。
UCIの規則で選手は毎年心臓ストレス検査と診断書の提出が義務づけられています。
しかし心疾患の予防を完全に行うのは困難です。
プロロードレーサーについてはこちらの記事を参考に
女子プロロードレース界を牽引するレジェンド マリアンヌ・フォス
【ロードバイクFTP判定】自分のFTP 高いor低い?国内プロ・海外プロと比較!
痛ましい事故のニュースを耳にすると、プロロードレーサーは早死になのかと思ってしまいます。
しかし、研究結果そんな世間のイメージとは正反対のものです。
プロロードレーサーは、一般人より寿命が長いことが分かっています。
1947年以降にツールドフランスに1回以上出場したフランス人プロロードレーサー786人を調査しました。
2012年9月1日現在で、786人のうち208人が亡くなっていました。
プロロードレーサーは、平均的なフランス人よりも6.3年長生きでした。
別の研究もあります。
1930年から1960年のツールドフランスに参加したプロロードレーサー834人を調査しました。
内訳はフランス人465人、イタリア人196人、ベルギー人173人でした。
50%死亡の年齢は81.5歳でした。
一般人の平均73.5歳に比べて17%長くなりました。
1950年代から1960年代は、アンフェタミンによるドーピングが行われていました。
1970年代から1980年代は、アナボリックステロイドの全盛期です。
1990年代に入ると、EPOが流行り始めます。
ドーピングによる副作用があるにも関わらず、プロロードレーサーの平均寿命は一般人より高いものでした。
ドーピングについてはこちらの記事を参考に
【サイクルロードレースの次世代ドーピング】遺伝子ドーピングとは!?
プロロードレーサーは、引退後もサイクリングを楽しむ傾向があります。
喫煙率も低いです。
プロロードレーサーは、一般人よりも優れた身体能力が備わっています。
こういったことが寿命を長くしていると考えられています。
プロのトレーニングについてはこちらの記事を参考に
ZWIFTで会えるプロロードレーサー ワレン・バルギル選手!
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プロロードレーサーほど激しくトレーニングしないアマチュアロードレーサーでも、寿命に良い影響を与えています。
イギリスで8万人を対象にした調査では、ロードレーサーは病気や事故などで死亡する可能性が15%低くなりました。
ロードレーサーだけが低いのではなく、水泳などでも低い値になりました。
デンマークの4万5千人を対象にした研究では、心疾患のリスクが11%から15%低下しました。
プロロードレーサーの平均寿命は、一般の人より高いです。
この結果から、プロ並みのトレーニングが寿命を長くすると考えるのは危険です。
プロロードレーサーは、一部のスポーツエリートです。
普通の人が、長年にわたってプロ並みの過酷なトレーニングを行うと寿命に悪影響を与える可能性があります。
しかし、自分にとって限界まで追い込むトレーニングが寿命に悪影響を与える可能性は低いかも知れません。
欧州心臓病学会(ESC)は、自転車によるトレーニングと長生きの関係について調査しました。
その結果、自転車によるトレーニングの強度が高いほど長生きできることが分かりました。
高強度トレーニングは、寿命に悪影響を与えないとする研究結果もあります。
別の研究結果もあります。
アマチュアサイクリストを調査しました。
軽強度と中強度のトレーニングは寿命を長くしました。
しかし高強度のトレーニングは寿命を長くするものではありませんでした。
適度なトレーニングをすれば寿命は長くなります。
過度なトレーニングは、寿命に悪影響を与えるかも知れません。
パワー系選手の寿命は、一般人より短いことが知られています。
プロロードレーサーや長距離ランナーなど持久系種目の選手は、ウェイトリフティングなどパワー系の選手に比べて長生きです。
フィンランドのパワーリフティング選手の平均寿命は、全ての種目で最も低くなりました。
一般人よりも短命でした。
力士は、プロロードレーサーと対照的です。
勝つために体重増加を求められ、有酸素能力はあまり必要ありません。
1989年から1991年までに幕内に入幕した力士664人を調査しました。
日本相撲協会が健康検査を導入したり力士に健康指導している結果、平均寿命は改善傾向にあります。
それでも1978年から1992年の平均寿命は65.2歳と一般男性に比べて低いものでした。
日本人男性の平均寿命は81歳です。
パワー系選手の寿命は、肥満と関係していると考えられています。
肥満は、死亡リスクを高めます。
引退後の体格の小ささや経済的地位の高さが、平均寿命に影響を与えます。
経済的地位が高いほど、質の高い医療を受けることができます。
特に肥満は死亡リスクを高めます。
パワー系種目である力士も例外ではありません。
北の湖親方が63歳で亡くなったのは記憶に新しいところです。
日本相撲協会の第55代横綱で理事長を務める北の湖敏満氏(本名小畑敏満=おばた・としみつ)が20日午後6時55分、福岡市の病院で直腸がんによる多機能不全で死去した。62歳だった。通夜、告別式は未定。
日刊スポーツ 2015年11月20日付
元横綱千代の富士の九重親方は引退後もトレーニングを続けていましたが、61歳で亡くなりました。
力士は肥満によりBMIが高くなります。
その結果、引退後も糖尿病や高血圧、高脂血症に悩まされます。
BMIが高いほど寿命は短いことが分かりました。