ロードバイクトレーニングだけでなく、トライアスロンや陸上の選手も高地トレーニングします。
高地は平地と比べて空気が薄いです。
高度が上がると気圧や気温が低下するので空気が薄くなります。
標高が上がっても空気が薄くなるだけで、酸素濃度は平地と同じ約21%
空気が薄くなるので空気抵抗が減ります。
標高1000mを超えると短距離種目は良い記録が出やすくなります。
逆に長距離種目は酸素不足によりパフォーマンスが低下します。
有酸素運動についてはこちらの記事を参考に
ロードバイクの有酸素能力を最大限に引き上げるZ2トレーニング徹底解説
標高が2000mを超えると、酸素運搬能力に影響が出始めます。
標高5000mを超えると人体への悪影響は深刻なものになります。
標高8000m以上はデス・ゾーンと呼ばれ、人体が順応することは不可能です。
酸素の薄い環境に滞在すると、EPOが上昇します。
EPOとは、エリスロポエチンのことです。
EPOは、血液中で酸素を運搬する役割である赤血球を作るように指示する物質です。
EPOが上昇すると赤血球の数が増え、酸素運搬能力が高まります。
同じ強度でトレーニングしても疲れにくい体になります。
EPOは製剤でも摂取できますが、血液ドーピングとなるため禁止されています。
EPOを使ったドーピングは、1990年代から2000年にかけて行われていました。
ドーピングについてはこちらの記事を参考に
【サイクルロードレースの次世代ドーピング】遺伝子ドーピングとは!?
低酸素でトレーングすることによりミトコンドリアも増加します。
ミトコンドリアは細胞内でエネルギーを作る役割があります。
ミトコンドリアについてはこちらの記事を参考に
高地順化すると、毛細血管が発達します。
EPOの上昇、赤血球数の増加、毛細血管の発達により高地でトレーニングすると酸素摂取能力が向上します。
標高2500m程度の酸素濃度でトレーニングすると、疲労困憊までの時間が9分間短くなります。
最大心拍数は変化しません。
最大酸素摂取量は15%低下します。
血中乳酸濃度は変化しません。
ただし、高地では低地に比べて血中乳酸濃度が急上昇します。
無酸素運動に切り替わるのが早くなります。
筋肉への酸素供給能力が低下するためです。
高地に滞在すると体調管理が難しくなります。
標高2000m相当の低酸素環境に滞在しトレーニングすると、多くの選手が4日目から5日目に体調不良になります。
低酸素環境により、体の回復が遅れるためです。
低酸素環境に順応できるかは、個人差が大きいです。
標高2200mの環境で心拍数160回/分の運動を行いました。
動脈血酸素飽和度(SPO2)を測定すると86%から93%と大きな差がでました。
SPO2は動脈血の酸素濃度のことで、通常は99%から100%です。
SPO2が低くなりやすい人は、高地環境で体調不良になりやすい傾向がありました。
SPO2が低くなりやすい人が高地トレーニングを繰り返しても、順応性が高い人と同じになることはありませんでした。
同じ強度のトレーニングでも、高地は平地より疲れやすいので運動強度が下がります。
低酸素の環境では血漿量が減ります。
血漿量が減ることで、血液の粘性が上がります。
その結果、筋肉への血流量が減少し筋力が低下します。
標高2000mから2500mに30日間滞在しました。
最初の2週間は筋力が低下しましたが4週間目に元に戻りました。
標高2000m以上に滞在すると、直後からEPO分泌量が上昇します。
EPO分泌量の上昇は、2日後から3日後がピークです。
EPOが分泌されてから赤血球が増えるまでは、タイムラグがあります。
1週間程度では、ヘモグロビン濃度や赤血球数に変化はありません。
有意に上昇するまでには20日間以上かかります。
骨髄で赤血球新生が開始されて血液中に放出されるには、日数が必要です。
Vo2maxを上昇させるためには、ヘモグロビン濃度や赤血球数の増加が必要です。
確実にVo2maxを上げるには、高地環境に3週間から4週間滞在する必要があります。
VO2MAXについてはこちらの記事を参考に
【ロードバイクのVO2MAX判定】自分のVO2MAXは普通より高いor低い?【海外プロロードレーサーと比較】
無酸素能力は、短期間で上昇する可能性があります。
高地環境では、有酸素的代謝機能が抑えられます。
その結果、無酸素的代謝機能が亢進されるためと考えられます。
高地環境に10日間滞在すると、400m走のタイムが短縮されたとするデータもあります。
高地環境でも、最大パワーはあまり低下しません。
最大パワーは無酸素域運動になるので、酸素を使わないためです。
しかし、無酸素パワーインターバルをする場合は回復に時間がかかります。
スプリントトレーニングについてはこちらの記事を参考に
ロードバイクのスプリント力に直結する「無酸素パワー」への大きな誤解
標高が高ければ高いほど良いとは言えません。
標高3000mを超える高地でのトレーニングは、否定的な結果が出ています。
効果的な高地トレーニングは、標高2000mから2500mです。
低地で生活し、高地でトレーニングする方法です。
高地で過ごすことによる体調悪化を軽減することができます。
トレーニングのみ高地で行うことで体調不良を防ぎ、疲労を回復させることができます。
標高3000m程度に設定した低酸素室で5日間トレーニングした場合を紹介します。
低地でトレーニングした人に比べてVo2maxが上昇することが分かりました。
高地で生活し、トレーニングは低地で行う方法です。
高地トレーニングのデメリットであるトレーニングの質の低下を防ぐ方法です。
標高2500mに滞在し、トレーニングは標高1300mで行った場合を紹介します。
標高の低い所でトレーニングすることにより、トレーニングの質を保つことが出来ました。
結果としてVo2maxが5%上昇し、5000mのタイムが縮まりました。
標高3000mにトレーニングせずに滞在しても、血液性状は変化しませんでした。
高地トレーニングと言えば、アメリカのコロラド州にあるボルダーが有名です。
アリゾナ州になあるフラッグスタッフ(標高2100m)や中国の昆明(標高1900m)も有名です。
国内で高地トレーニングできる場所は限られています。
高地トレーニングが最も盛んなのは長野県です。
長野県東御市には「GMOアスリーツパーク湯の丸」があります。
GMOアスリーツパーク湯の丸は標高1735mにあるよ!
GMOアスリーツパーク湯の丸には日本で最も高所にある400mトラックと国内唯一の高地トレーニング専門屋内プールがあります。
菅平高原は標高1200mから1600mにあり、高地トレーニング合宿が盛んに行われています。
菅平高原は箱根駅伝出場大学も合宿しているよ!
小諸市の浅間山周辺には標高2000mの高地が広がっています。
小諸市にはチェリーパークラインと呼ばれる車坂峠があります。
平均斜度が8.8%で標高2000mまで上がれます。
標高差は940mです。
「蔵王坊平アスリートヴィレッジ」は標高1000mにあります。
ナショナルトレーニングセンター(NTC)競技別強化拠点に指定されています。
一般の人でも宿泊できます。
各種のトレーニング室や低酸素室もあるので標高は低いものの、高地トレーニングを体感したい人には向いています。
標高は低いものの、トレーニング施設が充実しているよ!
「飛騨御嶽高原高地トレーニングエリア」は標高1200mから2200mにあります。
ナショナルトレーニングセンター(NTC)競技別強化拠点に指定されています。
日本陸連の強化合宿にも使われています。