トレーニングをすると、筋肉や免疫機能、心肺機能が傷つきます。
トレーニングは、体を傷つける行為です。
傷ついた筋肉や免疫機能、心肺機能を回復させるのがリカバリーです。
速くなるには、ペダルを力強く廻す必要があります。
ペダルを力強く廻すと、絶対に体が傷つきます。
傷ついた体を修復させることにより、トレーニングする前よりも強い体になります。
トレーニングとリカバリーはセットです。
リカバリーすることで、人は強くなります。
リカバリーについてはこちらの記事を参考に
ロードバイクのリカバリー戦略 回復食のタイミング・量・注意点
リカバリーには栄養摂取やマッサージ、睡眠など様々な種類があります。
その中でも、睡眠はリカバリーに最も重要な要素です。
睡眠時に、体は最大限に修復されます。
ロードバイクが速くなるために、トレーニング方法や栄養摂取に気を付けている人は多いです。
睡眠は、軽視されがちです。
厚生労働省の調査によると、成人の5人に1人は睡眠に問題を抱えています。
24時間活動する社会の中で交代制勤務など、不規則な生活をせざるを得ない状態も多いです。
睡眠を軽視すると、体の回復が遅れるだけではありません。
睡眠不足は、心理的な負荷も増大させます。
睡眠不足とオーバートレーニングは、密接な関係があります。
オーバートレーニングについてはこちらの記事を参考に
バーンアウト(燃え尽き症候群)を防げ!~いつまでも情熱的にレースするために~
睡眠中の脳と体
睡眠している時の人の体では何が起きているのでしょうか?
睡眠状態とは、感覚器官は覚知できるが意識は喪失している状態です。
揺さぶったり、痛みを与えても覚醒しない昏睡状態とは異なります。
睡眠は、24時間サイクルです。
睡眠の効果として次のことがあります。
睡眠は体の回復だけでなく、脳にも大きな影響があるよ
睡眠は、トレーニングによって傷ついた筋肉を回復させる生理的な役割もあります。
心理的な回復機能もあります。
睡眠を十分にとることで心身共にリフレッシュできます。
人は、人生の三分の一を寝て過ごします。
個人差がありますが、一日に6時間から10時間睡眠します。
必要な睡眠時間は、人によって違います。
トレーニングにより代謝や神経、免疫の状態は悪化します。
睡眠は、これらを安静時の値に戻す役割があります。
睡眠は「浅い眠り」「深い眠り」「逆説睡眠(レム睡眠)」の3つの状態があります。
効果的な睡眠は、3つの状態の全てが必要です。
うとうとしており、わずかな物音でも簡単に目が覚めます。
筋肉は、徐々に弛緩していきます。
心拍数や血圧も徐々に低下します。
眠り始めの時間帯です。
呼吸がゆっくりになり、いびきをかき始めます。
心肺機能の活動が低下します。
ホルモン系は、活発に活動します。
睡眠初期で、ホルモン系は最も活動します。
トレーニングにより傷ついた組織が、最も再生される時間です。
リカバリーの視点から考えると、最も重要な時間帯です。
深い睡眠期間の80分から100分後に訪れます。
脳は活動し覚醒状態にあるのに、筋肉は弛緩し休息状態にあります。
夢を見るのは、この時です。
逆説睡眠期間の直後に起きると、夢を覚えています。
極端な睡眠不足で急速に逆説睡眠期間になると、脳は覚醒状態なのに筋肉が弛緩しています。
この時起こるのが「金縛り」です。
金縛りは、ひどく疲れていたり、睡眠不足の時に起こります。
最初の逆説睡眠期間(レム睡眠)は、数分で終わります。
眠りの周期は90分です。
睡眠時間期間が進むにつれて、深い眠り期間は短くなっていきます。
逆に、逆説睡眠期間は長くなります。
眠っている時間の20%強が深い睡眠期間です。
20%は逆説睡眠期間です。
睡眠時間が長くなると、深い睡眠が減っていきます。
最終的に、自然と起床します。
交感神経と副交感神経を併せて、自律神経と呼びます。
自律神経は心拍数や血圧を調整し、内蔵の活動を司ります。
自分の意志とは関係なく働きます。
交感神経は、ロードバイクトレーニング時や緊張している時に活発になります。
副交感神経は、寝ている時やリラックスしている時に活発になります。
スポーツ選手を36時間眠らせない実験をしました。
その結果、交感神経の活動時間が増加し、副交感神経の活動が低下しました。
睡眠不足で高強度のトレーニングを繰り返すと、交感神経と副交感神経のバランスシステムが崩れます。
自律神経のバランスが崩れるとオーバートレーニングにつながります。
睡眠によるリカバリーの目的は、副交感神経を活発化させることです。
副交感神経が活発化することにより筋肉は弛緩し、心肺機能は休息します。
ホルモン系は活性化するので、トレーニングで傷ついた筋肉が修復されます。
リラックス状態になるので心理的に回復します。
次のトレーニングへのモチベーションが向上します。
副交感神経の活性化は、様々なメリットがあります。
起床時は、自律神経が活発化しやすいくなります。
自律神経が活発化すると心拍数が増加し体温、血圧が上昇します。
結果的にエネルギー消費が多くなります。
スポーツ選手を30時間睡眠させない実験では、筋グリコーゲン濃度が低下しました。
起きていることにより、付加的なエネルギー消費が起こったためです。
起床時は、睡眠時より多くのエネルギーを使います。
トレーニング前に筋グリコーゲンが枯渇していると、持久的機能に悪影響があります。
睡眠不足は、成長ホルモンの分泌を減らします。
成長ホルモンの分泌が減ることで、タンパク質の合成が低下します。
リカバリー能力に悪影響を及ぼします。
長期的な睡眠不足は、リカバリーを妨げるのでトレーニングに悪影響を与えます。
ロードレース前日に移動や緊張で、一時的に睡眠不足になることがあります。
前日の睡眠不足が翌日のパフォーマンスに影響するかは、諸説あります。
どの程度の影響があるかは、はっきりと分かっていません。
30時間起きたままの状態が、パフォーマンスに影響するかを調べた実験が複数あります。
結果は様々でした。
「睡眠が不足している」という自覚が心理的にパフォーマンスに影響している可能性もあります。
睡眠不足は、精神状態にも影響を与えます。
学生寮で集団生活するスポーツ系学生男女161名を調査しました。
学生は、朝6時から8時まで朝練があります。
夕方まで授業を受け、夜8時まで練習します。
練習後は自由時間の後に就寝します。
調査の結果44.7%の学生が睡眠に問題を抱えていました。
厚生労働省の調査では成人の20%に睡眠の問題があるので、一般人よりも高い数字です。
睡眠に問題があると自覚する学生の主観的な健康状態も、不良でした。
入眠時間と精神的健康度には、相関関係がありました。
睡眠時間が不足していることよりも、寝付けないことが強いストレスにつながっていました。
長い睡眠時間よりも、寝付きやすい環境の方が大切なことが分かりました。
人には、それぞれのクロノタイプ(睡眠型)があります。
夜型や強い夜型の人は、朝練に向きません。
クロノタイプについてはこちらの記事を参考に
朝型!?夜型!?クロノタイプを知って朝練ロードバイクトレーニング!!
クロノタイプは生活習慣を変えることで変化する可能性は低いことが分かっています。
夜型なのに、6時から朝練をすることが強いストレスにつながっている可能性があります。
睡眠に対するストレスが、リカバリーを遅らせます。